2014 Fiscal Year Annual Research Report
移植医療を標的とした細胞組織を封入するためのマイクロ流体システムの開発
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14F04771
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 昌治 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90343110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MAZARI-ARRIGHI Elsa 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | セルファイバ / Microfluidics / 三次元組織構築 / 細胞外マトリクス / 再生・移植医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ流体デバイスを用いた新たな三次元細胞培養法であるセルファイバ作製技術を習得した。具体的には、同軸層流を形成可能なマイクロ流体デバイスを作製した。そのマイクロ流体デバイスを用いてシェルがアルギン酸カルシウムゲル、コアが細胞と細胞外マトリクスから成るコアシェルマイクロファイバ作製方法を確立した。まず、コアに封入する細胞には株化細胞である3T3細胞を用い、セルファイバ形成のための各流体コンポーネントの流速条件の検討、および細胞密度の検討を行い最適化した。 確立したコアシェルマイクロファイバ作製方法に、初代細胞であるラット肝細胞を応用し、肝細胞ファイバを作製した。具体的には、ラット肝臓から分離、回収された肝細胞を用いて、セルファイバ形成可能な細胞外マトリクスの条件を検討した。コラーゲン単独では肝細胞ファイバ形成が見られないが、コラーゲンとマトリゲルの混合ゲルに懸濁した肝細胞をコアとし用いることで、肝細胞ファイバの作製に成功した。さらに、アルギン酸カルシウムゲルをシェルとするコアシェルマイクロファイバ内における肝細胞の生存率およびアルブミン産生能を指標とした肝細胞機能を評価した。培養皿を用いた二次元培養と比較して、三次元培養である肝細胞ファイバでは生存率、アルブミン産生能共に高い値を示した。さらに、シェルのアルギン酸カルシウムゲルに線維芽細胞である3T3細胞を封入することで、コアシェルマイクロファイバ内において肝細胞と線維芽細胞の共培養に成功し、肝細胞単独の肝細胞ファイバに比べ、さらに生存率および肝細胞機能の向上が認められた。以上のことから、マイクロ流体デバイスを用いることにより、in vitroでの三次元肝臓組織構築に向けた初代培養肝細胞ファイバの作製に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画の通りに成果を得られている。竹内昌治研究室で開発、改良されてきたコアシェルマイクロファイバ作製技術は、多くの細胞種および細胞外マトリクスの使用に対して汎用性が高く、セルファイバ作製においても効率的な条件検討が可能であった。さらに実験結果から、細胞外マトリクスの種類によりセルファイバ形成能に劇的な差異があることを見出し、早期に初代培養肝細胞ファイバ作製条件の最適化が可能であった。 また、二次元培養と三次元培養(セルファイバ)において、それぞれの培養条件下で肝細胞のアルブミン産生能に変化が認められたため、肝細胞ファイバの機能解析の指標として用いることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現状において、研究は順調に進展しており、今後も当初の計画通り推進していく。コアシェルマイクロファイバ技術を用いて確立した、コラーゲン-マトリゲル混合ゲルにラット肝細胞を懸濁したコアと、線維芽細胞を含むアルギン酸カルシウムゲルのシェルを有する肝細胞ファイバの、さらなる最適化と詳細な機能解析を行う予定である。 現在、肝細胞の生存およびアルブミン産生能をサポートする線維芽細胞に3T3細胞を使用しているが、今後初代培養線維芽細胞の使用も検討していく予定である。さらに最適化した肝細胞ファイバを用いて、in vitroにおいて、薬剤スクリーニングなどに応用可能なより生体に近い肝臓様三次元組織が構築できるかの検討を行う。さらに、in vivoでの機能評価を行なっていく。具体的には、薬剤誘導性に作製された急性肝炎モデル動物の肝臓に肝細胞ファイバを移植し、生体内での肝細胞ファイバの挙動、および肝炎モデル動物の肝機能の改善の有無を評価することで、肝細胞ファイバの再生・移植医療への応用を検討していく。
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