2015 Fiscal Year Annual Research Report
ColE7を用いたアロステリック制御機構を持った人工ヌクレアーゼの開発
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14F04807
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
永田 恭介 筑波大学, 学長 (40180492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NEMETH ESZTER 筑波大学, 医学医療系, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 人工ヌクレアーゼ / DNA修復 / ジンクフィンガーヌクレアーゼ / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大腸菌由来のコリシンE7ヌクレアーゼ(ColE7)を用いた新規の人工ヌクレアーゼの開発を目的とする。ColE7のC末端側に存在する亜鉛イオン依存性ヌクレアーゼドメインは単独ではほとんど活性を持たず、N末端側アミノ酸領域によるアロステリックな制御を受けて活性化する。このようなColE7の性質を利用し、3つのジンクフィンガー(ZF)からなるDNA結合領域の両末端にColE7のN末端およびC末端ヌクレアーゼドメインを融合し、DNA結合によりアロステリックな活性制御が可能となる新規人工ヌクレアーゼを作製する。 平成27年度では、in silicoでの分子モデリングの結果を元に3種類のColE7-ZFヌクレアーゼを設計し、これについて組換えタンパク質を作製した。これらタンパク質中に配位している亜鉛イオンの分子数をnano-ESI-MSにより確認した。次にZFの結合配列を含むDNAを作製し、それぞれのColE7-ZFのDNA切断活性を検証した。その結果、それぞれのColE7-ZFにおいてZF結合配列近傍のDNAへのニックの導入が観察され、ColE7のN末端4アミノ酸配列とC末端ヌクレアーゼ領域の45アミノ酸配列がヌクレアーゼ活性に必須であり、またヌクレアーゼ領域105アミノ酸を用いたときにより高い活性を示すことが明らかなった。しかし、DNA2本鎖切断には非常に長い反応時間を必要とした。さらにZFの結合配列をプロモーターとEGFP ORFの間にクローニングしたレポータープラスミドを作製した。これを各ColE7-ZFと細胞へ共発現し、DNA切断によるEGFP発現量への影響を検証した。その結果、ColE7-ZFの発現によりEGFP発現量の減少が観察されたが、その減少率は約10%程度と非常に低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、作製した3つのColE7-ZFヌクレアーゼについては結合配列に依存したDNA切断活性があることを試験管内および細胞内の両方で確認した。これらの解析より、ColE7のN末端4アミノ酸配列とC末端ヌクレアーゼ領域の45アミノ酸配列が、ZF融合型ヌクレアーゼの活性に必須であり、またヌクレアーゼ領域105アミノ酸を用いたときにより高い活性を示すことが明らかとなった。以上の結果については、現在論文投稿の準備中である。しかしDNAへニックを導入する効率に比較して、2本鎖DNAの切断活性は非常に低く、実用性という点ではまだまだ改良する必要がある。また実際に細胞内で人工ヌクレアーゼを作用させる場合、DNAがクロマチン構造を形成していることを考慮する必要がある。現在までの試験管内の解析は、裸のDNAを鋳型とした活性のみの評価となっている。このため、今後は試験管内再構成クロマチンを用いた解析、および細胞内でクロマチン構造を形成するプラスミドDNAを用いたレポーター解析も進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、以下の点についてそれぞれアプローチを行なう。 (1)高活性ColE7-ZF人工ヌクレアーゼの開発:これまでin silicoの分子モデリング解析より、ColE7のN末端領域4アミノ酸とC末端ヌクレアーゼ領域45あるいは105アミノ酸領域を組み合わせた3種類の人工ヌクレアーゼについて活性比較を行なったが、その活性はまだ十分なものではない。そこでこれまでの結果を踏まえてさらなるin silicoの分子モデリング解析を行い、より高いヌクレアーゼ活性を示す可能性のあるアミノ酸領域の探索を行なう。これらについて組換えタンパク質を作製し、試験管内でのヌクレアーゼ活性の検証を行なう。またレポータープラスミドDNAを用いて、細胞内でのヌクレアーゼ活性の検証を行なう。 (2)クロマチンを鋳型としたヌクレアーゼ活性の検証:大腸菌発現系より調製した組換えヒストンタンパク質と鋳型DNAを用いてクロマチンを再構成し、ColE7-ZFのDNA切断活性を検証する。また、細胞内でDNA上にクロマチン構造を形成してエピゾームとして維持されるプラスミドを用いてレポーターを作製し、細胞内でクロマチン構造を鋳型としたColE7-ZFのDNA切断活性を検証する。
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