2014 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス条件下の神経新生におけるシクロオキシゲナーゼとプログラニュリンの相互作用
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14F04906
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西原 真杉 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (90145673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MA Yanbo 東京大学, 農学生命科学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 神経新生 / ストレス / シクロオキシゲナーゼ / プログラニュリン |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬歯状回では成熟後の個体においても恒常的に神経の新生が行われている。近年、ストレス条件下にある動物ではこの神経新生が抑制されることが明らかとなった。一方我々は以前、脳内でのストレス情報仲介因子としてシクロオキシゲナーゼ―2(COX-2)を同定するとともに、プログラニュリンが神経新生に関与することを見出している。そこで本研究では、急性感染ストレスモデルとしてリポ多糖(LPS)の腹腔投与を行い、海馬でのストレス性神経新生抑制機構におけるCOX-2関連シグナルとプログラニュリンの役割を明らかにすることを目的としている。これまでの研究で、LPSは海馬での神経新生を抑制させる一方でCOX-2関連シグナルを活性化すること、またこの減少はCOX-2の阻害により重篤化することが明らかとなり、COX-2関連シグナルが海馬での神経新生に対して保護的な役割をもつことが示唆された。我々はさらに、神経保護作用をもつ脳内因子として近年同定されたプログラニュリンについても、ストレス性の神経新生抑制時において保護的に働く可能性を検討した。同遺伝子の欠損マウスを用いた解析により、プログラニュリンの欠損は海馬の神経新生抑制には顕著な影響を与えないことが明らかとなった。ストレス性の海馬神経新生の抑制機構を明らかにすることは、ストレスによる認知機能の低下や鬱病の発症機序の解明に大きく寄与すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は急性感染ストレス条件下の海馬神経新生におけるCOX-2関連シグナルとプログラニュリンの役割の解析を主要な目的としている。COX-2関連シグナルの海馬における神経新生については、急性感染ストレスモデルを用いた解析によりCOX-2関連シグナルが海馬の神経新生を促進することが明らかとなり、COX-2関連シグナルの生理作用に関する研究が大きく進展した。また、プログラニュリン遺伝子欠損マウスを用いた解析により、プログラニュリンの欠損は海馬の神経新生減少に顕著な影響を与えないことや、ミクログリア自身の過剰な活性化を抑制することが明らかとなった。以上のように、当初計画していた研究目的はほぼ達成されており、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、急性感染ストレス条件下の海馬神経新生におけるCOX-2関連シグナルの作用機構に関する研究と、プログラニュリン遺伝子欠損マウスを用いたプログラニュリンの脳内における生理作用の解析をさらに進める。まず、急性感染ストレスモデルラットの脳を主に生化学的手法および免疫組織化学的手法により解析し、海馬神経新生におけるCOX-2の下流にあると考えられるプロスタグランジンE2およびPGE受容体の分子メカニズムの解明を行う。また、培養神経幹細胞を用いて、細胞レベルでのストレス応答性におけるCOX-2関連シグナルとプログラニュリンの役割についての解析を行ない、両因子が持つ神経細胞保護作用の機序を検討する。これらの研究により、COX-2関連シグナルとプログラニュリンの生理的意義や作用機構の解明を目指す。
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Research Products
(2 results)