2006 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアDNA突然変異導入モデルマウスを用いた病態発症機構の解明
Project/Area Number |
14GS0305
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
林 純一 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 教授 (60142113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米川 博通 (財)東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 副所長 (30142110)
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Keywords | ミトコンドリア遺伝病 / マウス突然変異型mtDNA / 病態モデルマウス / 核移植による遺伝子治療 / クローンマウス |
Research Abstract |
論文:Shin-Ichi Inoue, et al.(2006) Hum. Mol. Genet. 15:1801-1807. 一つの細胞から成る受精卵と異なり成体の場合は、個々の細胞に正常なmtDNAを導入することが不可能である。本研究では骨髄細胞に万能性をもつ幹細胞がある可能性を想定し、放射線照射したミトマウスに正常なmtDNAをもつ骨髄を移植することで、正常細胞による入れ替えを試みた。その結果、完全な回復を認めなかったが1ヶ月以上の延命効果があった。今後は更に延命効果が期待できる万能細胞の導入を試みる予定である。 論文:Kazuto Nakada, et al.(2006) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:15148-15153. ミトマウスの欠失突然変異型mtDNAが雄の生殖細胞に蓄積して呼吸欠損を起こすと男性不妊の原因になることを世界で初めて証明した。突然変異型mtDNA蓄積による呼吸欠損が精子の運動能を低下させるだけでなく、減数分裂の阻害によって成熟精子数を激減させることは、これまでの常識を覆す新発見として評価された。逆にこの呼吸欠損は体細胞分裂は全く阻害しなかった。 この研究成果は、学問的かつ社会的インパクトが極めて高く、平成18年10月3日のNHKの「おはようにっぽん」で放映されただけでなく、読売新聞、毎日新聞など全国版朝刊、インターネットニュースでも一斉に報道され、また10月13日には朝日新聞夕刊の科学欄で紹介された。 論文:Liqin Cao, et al.(2007) Nature Genet. 39:386-390. mtDNAの突然変異が短い世代を経るだけで定着するという奇妙な現象に対し、従来は卵形成過程でmtDNAのコピー数が極端に減るボトルネック効果があるからだと説明されてきたが、実際に注意深い測定をすることで、コピー数の減少ではなく複製単位の減少であることを明らかにした。 この研究成果は平成19年2月14日の日刊工業新聞朝刊と2月23日の科学新聞で報道された。この基礎研究は社会的なインパクトは少なかったが、哺乳類ミトコンドリアの遺伝学に対する学術的なインパクトが強く、科学新聞での扱いは大きかった。
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Research Products
(3 results)