2014 Fiscal Year Annual Research Report
弾塑性構成則を搭載した不連続体解析手法による地盤と石積構造物の相互作用問題の解明
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14J00077
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 涼太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 地盤 / 数値解析 / 文化財保存 / アンコール遺跡 / カンボジア / 石積構造物 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、カンボジアの世界遺産アンコール遺跡をはじめとして、多くの石造構造物が基礎地盤の変状による崩壊の危機に瀕している。その文化的価値を守り、保存していくためには変状要因の解明と安定性を担保することができる修復方法の検討が不可欠である。本研究課題では、石積構造物と基礎地盤の相互作用問題をシミュレート可能な解析コードの開発,および構造物の安定性評価への適用を目的としている.本年度は,(1)土‐水連成解析コードの開発,(2)カンボジア現地における土試料の採取に取り組んだ.以下,各項目について述べる. (1)土‐水連成解析コードの開発:アンコール遺跡には,建造から数百年経過した現在,基礎地盤の変形の影響を受け傾斜等の変状をきたしている石積構造物が多数見られる.アンコール地域には粘性土からなる地山層の存在や,構造物基礎として築造された版築盛土の浸水による強度低下が確認されており,土中水の移動や含水状態の変化が構造物の安定性に寄与したものと推察される.そこで,これらの影響を考慮した安定性評価を実施するため,これまでに石積構造物の安定解析に向けて開発してきた不連続体数値解析コードを土中水の浸透過程の影響も考慮した土‐水連成解析へと拡張した.これによって,圧密現象を生じ得る地盤上に建造された石積構造物の長期変形挙動が解析可能となった. (2)カンボジア現地における土試料の採取:地盤の数値解析を実施するにあたって対象とする地盤の力学諸量の情報が欠かせない.本年度は,本研究で対象とするアンコール遺跡のバイヨン寺院の東参道において実施された考古学的発掘調査の際に版築,および自然地盤試料を採取した.次年度にて力学試験を実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,地盤と石積構造物間の相互作用問題を表現し得る数値解析法を開発した上で,実際の構造物へと適用し,その変状メカニズムの解明および適切な修復方法の提案を行うことを目的としている.そのために必要な過程は,主に(1)対象とする現象を表現可能な解析手法の開発とその性能の検証,(2)現地の地盤の力学特性の把握,そして(3)実問題への適用というステップに分けられる.本年度は,(1)の数値解析法の開発に取り組み,今後アンコール遺跡の構造物の力学挙動を解析する上で必要となる技術的基礎を固めることができた.また,(2)の現地地盤の力学特性を解明するにあたって必要となる土試料も採取に漕ぎ着け,一定の進展が見られたといえる.ただし,新たな手法の開発という特性上,数値計算結果と理論解との比較等基礎的な検討に留まっている面もある.次年度はこれまでの成果を土台として,より具体的な問題への応用に歩を進めたい.
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的を達成するために今後は(1)原位置地盤の力学特性の把握と(2)実構造物の安定解析の実施を目指す.まず,平成26年度に採取された土試料に対して力学試験を実施,強度・変形に関するパラメータを明らかにする.実施する力学試験としては,等方圧密試験ならびに三軸圧縮試験を考えている.それぞれから土の圧縮特性,および強度を得ることができる.そして得られる力学諸量とこれまでに開発した解析法を用いて,アンコール遺跡の構造物,バイヨン寺院の圧密変形解析を実施し,これまでに生じている変状原因の究明ならびに今後の対策について検討する.
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Research Products
(6 results)