2015 Fiscal Year Annual Research Report
弾塑性構成則を搭載した不連続体解析手法による地盤と石積構造物の相互作用問題の解明
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14J00077
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 涼太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 石積構造物 / 数値解析 / 支持力 / アンコール遺跡 / 修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,アンコール遺跡をはじめとする石造文化財の力学特性を解明するために必要となる数値解析法の高性能化,また,開発した手法を用いた石積基壇の支持力特性の分析を進め,石積構造物と地盤の相互作用メカニズムの解明を目指した. 前年度までは不連続体解析コードNMM-DDAに対して弾塑性構成則の導入や土-水連成解析の定式化を行うことで手法の適用範囲の拡大を図ってきたが,今年度は,シミュレーションの効率・信頼性を向上し,対象とする現象を正しく分析・理解する上で不可欠である当該手法の高性能化に取り組んだ.具体的には従来の手法を地盤-石積構造物の相互作用問題に適用する際に課題であった体積ロッキング現象を節点ベース均一ひずみ要素の導入により解決するとともに,弾塑性構成則の陰的な応力積分法(リターンマッピング法)を搭載することによって高精度な地盤の変形解析を可能にした.開発した解析コードは現在取り組んでいる石造文化財の問題だけでなく,不連続体解析分野全般にインパクトを与える成果が上がっている. また,上記の解析コードを用いて実施した石積基壇構造の載荷シミュレーションを行い,石造文化財の修復時に課題となる基礎の支持力特性について分析した.その結果,石積基壇の支持力特性には地盤の強度特性の他に,石材の組積方法が大きく寄与することを明らかにするとともに,シミュレーションにより観察された破壊メカニズムを考慮することで,これまで経験的にしか評価し得なかった支持力を簡易かつ合理的に算定する方法を示すに至った.最終年度である次年度においてはこれまでに得られた知見を整理し,石積構造物基礎の設計に関する統一的な指針を提示したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の開始当初においては,アンコール遺跡の石積構造物基礎の安定性評価において重要なのは,基礎地盤の含水状態の変動にともなう変形・強度特性の変化であるという考えのもと,不連続体解析コードNMM-DDAを土-水連成問題へと拡張することに主眼において研究を進めてきた.無論その見解は現在も変わらないところであるが,本年度は,解析コードを一度解析結果の精度の観点から見直し,抱えていた課題を一つ一つクリアしていった結果,地盤と石積構造の相互作用メカニズムに関して当初の計画では想定されていなかった新たな知見を得ることができた.また,高精度化した解析コードを用いたシミュレーションの結果から,構造物の安定性に本質的に関わる要素を整理し,実用に供し得る簡潔な理論式にまで落とし込むことができた.これらの成果は当初想定していなかったものであり,以上のことから上記のような評価を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに提案した簡易設計法は現在確認している限りではNMM-DDAにより得られた石積構造物基礎の支持力特性を的確にとらえている.しかし,実用化を目指すには,提案式の適用可能範囲を明確にしておくことが重要となる.したがって,今後は石材の寸法,組積方法など様々な条件を変化させた石積基壇の支持力解析を実施した上で,その破壊メカニズムと提案した簡易設計法の限界を整理しつつ,統一的な設計指針を提示することを目指す.また,当初計画していた地盤の含水状態の変化が構造物の安定性に及ぼす影響についても引き続き検討を進めていく.
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Research Products
(3 results)