2015 Fiscal Year Annual Research Report
中近世のアルプス山脈・レヒ川流域における地域環境史-森林、河川、自然災害
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14J00164
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邉 裕一 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 環境史 / アルプス地域 / 自然環境の利用・保全 / 自然環境をめぐる紛争と地域秩序 / 地域環境史 / 災害史 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、地球規模での環境問題の解決が模索される一方で、世界の諸地域では、それぞれの地域の歴史的背景を踏まえ、地域社会ごとの問題や現状に適した方法で自然環境との共生や持続的な発展を目指す方向性にも注目が集まるようになってきた。歴史学、とくに豊かな地域への/地域からの視点を大切にする地域史研究には、それぞれの地域社会に根差した環境史への視座を持つことで、将来の地域社会の構築に歴史学の立場から貢献することが期待されている。 以上の問題意識のもと、平成27年度は、様々な分野・領域の研究者が集うできる限り多くの研究会・学会にて本研究の成果を報告し、他分野の専門家との対話を通じて、議論を深めることを目指し研究活動を行った。とくに、学外研究者として参加した「ユーラシアにおける「生態経済」の史的展開と発展戦略」プロジェクト(文部科学省 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業)や、「ヒト・自然・地域のネットワーク再構築―ナラティヴとアクションリサーチをつなぐ数理地理モデリング―」プロジェクト(総合地球環境学研究所・京都)など、文系・理系を問わず様々な研究領域の専門家が集う研究プロジェクトにも参加することで、本研究の個別課題の深化と並行して、その課題をさらに発展・展開させる見通しを得られたことが、本年度の最大の成果であった。 具体的には、2015年12月20日にイタリアのマッシモ・デッラ・ミゼリコルディア氏(ミラノ大学)を招いて開催された国際シンポジウム「アルプスからのインターローカル・ヒストリー <地域>から<間地域>へ」(主催:佐藤公美准教授/甲南大学)にて、「木材供給のための《間地域》関係―16世紀アウクスブルクの視点から」と題する報告を行い、本研究課題の成果の一部を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に則り、平成27年度も二度にわたり、ドイツ、オーストリアへの史料調査(平成27年10月および平成28年3月)を実施した。アウクスブルク市立文書館での未刊行史料の調査に加え、インスブルック市立図書館およびフュッセン市立図書館では、いままで入手が困難であった地方史資料・文献を入手することができた。それにより、研究遂行者がこれまで主要な分析対象としてきた都市アウクスブルクからの視点だけではなく、アルプス山岳地帯に伝来する史資料を分析することで、都市と山間部の相互関係を双方向から考察する見通しが得られた。この視点は、上述の国際シンポ「アルプスからのインターローカル・ヒストリー」での報告に存分に生かすことができた。以上、史料調査による分析視角の拡大と成果発表でのその実践、個別の事例研究に留まらない他分野・他領域の専門家との共同研究への積極的な参加などの実績から、本研究課題の計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成28年度は、これまでの史料調査を著書・論文にまとめることを第一の目的として研究を進めていく。具体的には、博士論文を基に16世紀における都市アウクスブルクの森林政策の全体像をまとめ、アウクスブルク大学図書館を通じて、オンラインにて公刊する予定である(Yuichi Watanabe, Waldpolitik und Holzversorgung der Reichsstadt Augsburg im 16. Jahrhundert, Universitaet Augsburg)。また、日本語でもこれまでの成果を単著にまとめる計画を出版社と進めており、平成29年3月までの刊行を目指す。 平成8年7月~8月には、残された史料調査と文献収集のため、再びドイツ・アウクスブルクに滞在し、最終的な史料確認を実施する予定である。さらに、研究会や学会での成果の発信は、今後も積極的に行っていく予定である。
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Research Products
(3 results)