2014 Fiscal Year Annual Research Report
溶媒和イオン液体のリチウム空気二次電池への適用及び電極反応機構の解明
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14J00165
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
多々良 涼一 横浜国立大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | リチウム空気電池 / イオン液体 / 溶媒和イオン液体 / 濃厚電解液 / グラファイト負極 / 溶媒活量 / 中間体溶解度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では溶媒和イオン液体の溶液特性評価とリチウム空気電池用電解液として適用した場合の電極反応の特異性調査を目的とした。平成26年度においては、(i)溶媒和イオン液体から濃厚電解液への概念の拡張とその溶液特性、(ii)濃厚電解液が及ぼす特異なリチウム空気電池正極反応、(iii)濃厚電解液が及ぼす特異なグラファイト負極反応の3点を軸に研究を実施した。 (i)溶媒和イオン液体は一種の超濃厚電解液とも表現できるが、その特異性は非常に低いフリーな(リチウムイオンに配位していない)溶媒の活量にあると考えられる。その溶媒活量の評価をラマン分光法と電極電位差測定の両方の側面から行った。フリー溶媒活量の定量は濃厚電解液中での電極反応の議論に極めて重要かつ国際的にも興味を持たれているトピックであり、本結果はPhys. Chem. Chem. Phys.誌に掲載された。 (ii)この低い溶媒活量は、溶媒として振る舞う分子が系中にほとんどいないことを示すため、物質の溶解特性に大きな変化を与えることが予想される。そこで回転リングディスク電極法を用いてリチウム空気電池正極反応である酸素還元反応(放電時)の中間体溶解性を調査したところ、濃厚電解液中では溶解性が通常濃度の電解液に比べ大幅に低いことが明らかとなった。また反応中間体が電極表面から散逸しないため、高い可逆性を示すことが明らかとなった。本結果は第55回電池討論会で口頭発表した。 (iii)リチウム空気電池の負極候補として、グラファイト負極への適用可能性を調査した。一般に通常濃度電解液中では副反応である溶媒共挿入反応が優先して起こってしまうが、濃厚電解液中では正反応である脱溶媒和プロセスが優先する。その原因がフリー溶媒活量の低下に伴う平衡電極電位の大幅なシフトであることを明らかにした。本結果はJ. Phys. Chem. C誌に2報掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は溶媒和イオン液体から濃厚電解液へ概念を拡張し、溶液特性の評価を行った。特にその特異性の起源である非常に低いフリー溶媒活量を定量評価した点は今後の電極反応解析にあたって極めて有用である。また本内容に関して第5回イオン液体討論会、第82回電気化学会で口頭発表を行い、Phys. Chem. Chem. Phys.誌に論文が掲載された。 また、濃厚電解液中における酸素還元反応の中間体溶解度評価を行い、その極めて低いフリー溶媒活量から、通常電解液と比較して溶解度が極めて低く、可逆性も高いことが明らかとなった。本結果は電極反応の本質として濃厚電解液の可逆性の高さを示したものであり、今後の電極反応の理解に大きく貢献したと言える。本内容は第3回JACI-GSCシンポジウム、電気化学会関東支部第32回夏の学校においてポスター発表を、第55回電池討論会において口頭発表を行っており、夏の学校ポスター発表では最優秀ポスター賞を受賞している。また、国際学会であるThe 17th International Meeting on Lithium Batteries (IMLB2014)においてもポスター発表を行った。 グラファイト負極に関しても、濃厚電解液中における副反応(溶媒共挿入)の抑制の原因が低い溶媒活量による平衡電極電位のシフトであることを解明した。本結果は長年謎であった濃厚電解液中でのグラファイト負極の特異的な反応を説明し、さらに溶媒和イオン液体が空気極、グラファイト負極の両方に適用可能であることを示したという意味で極めて重要であった。本結果は第82回電気化学会で口頭発表を行い、さらにJ. Phys. Chem. C誌に2報掲載された。 以上の進捗及び成果から、本研究が順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は溶媒和イオン液体から濃厚電解液へと概念を拡張することによって、溶媒和イオン液体だけに限らず、様々な溶媒を用いた濃厚系が「極めて低い溶媒活量」という特徴によって興味深い溶液特性、電極反応特性を得ることを見出すことができた。今後は今まで溶媒和イオン液体中を中心に調査してきた電解液中での溶媒和構造、輸送特性、電位窓などを濃厚電解液中でも調査し、これが電極反応に与える影響、特異性を精査していく予定である。具体的には様々な溶媒を用いた際の高濃度領域でのイオン解離性(Ionicity)を調査し、溶媒和構造との相関を議論する。また、様々な溶媒で形成される溶媒和カチオンの安定性とその脱溶媒和反応の電極電位の関係についても考察し、酸化安定性、還元安定性増大の起源にも迫る。これら溶媒活量が与える影響とともに、系中の酸素溶解度を紫外可視分光法を用いて定量し、酸素活量といった面からも酸素還元の電極反応を考察する。また、これら溶液化学的な特異性がグラファイト負極と空気極の反応メカニズムと可逆性に与える影響を見出していく予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Li+ solvation in glyme-Li salt solvate ionic liquids2015
Author(s)
Kazuhide Ueno, Ryoichi Tatara, Seiji Tsuzuki, Soshi Saito, Hiroyuki Doi, Kazuki Yoshida, Toshihiko Mandai, Masaru Matsugami, Yasuhiro Umebayashi, Kaoru Dokko, Masayoshi Watanabe
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Journal Title
Physical Chemistry Chemical Physics
Volume: 17
Pages: 8248-8257
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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