2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J00214
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 孝輔 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ローマ帝国 / テオドシウス法典 / 勅法 / 皇帝権 / 帝国統治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず昨年度まで取り組んでいた、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスによる婚姻立法に関する研究を進展させて、その成果を論文として発表することから始めた。ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスは様々な法律を導入した。中でも治世初期から晩年に至るまでアウグストゥスが追求し続けたのが、婚姻に関する法律である。本研究では、婚姻に関する諸法律の適用対象の拡大に着目し、ローマ帝国の属州におけるローマ法の受容のみならず、皇帝政府の側における、ローマ帝国の法と帝国の構成員に対する態度との変化に注意を促す。この研究の成果を、学術雑誌『西洋史学』に投稿し、掲載許可を得た。 その後、ローマ帝国における法の概念の変化について解明するために、4世紀の皇帝立法について考察した。ディオクレティアヌス(治世284~305年)以前の皇帝たちは、私人からの請願に応じて発した個別的な意思表明たる勅答によって、ローマ帝国における法律の制定に、大いに寄与していた。他方、コンスタンティヌス(治世306~337年)以降の皇帝たちは、勅答による個別的な意思表明ではなく、一般的な法規則を定める告示などの形式で行った立法を、史料上に数多く残している。こうした立法形式の変化を『テオドシウス法典』及び法典以外の歴史書における皇帝立法の形式への言及に基づいて検討した。 また、2015年1月中旬から3月下旬までの間に、英国のオックスフォード大学古典学部にて在外研究に従事し、日本国内で入手困難な文献・論文を参照した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでの研究の成果を論文として投稿し、先行研究では解明されていたい4世紀のローマ帝国における皇帝立法の形式上の変化と法の概念に関する研究に着手し、5~6世紀に編纂された法典以外にもエウセビオスの『教会史』『コンスタンティヌスの生涯』やアンミアヌス・マルケリヌスの『歴史』を検討することができた。その検討に基づき、次年度以降の研究において、法典に収録された勅法と法典以外の史料に残された皇帝立法への言及を比較検討する展望を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、今年度の研究の継続として、エウセビオス及びアンミアヌス・マルケリヌス以外にも、皇帝立法に言及する法典以外の史料を検討する。特に、キリスト教の著述家が記した、皇帝によるキリスト教迫害に関する文献において、皇帝の発した命令を意味するためにいかなる語を用いているか、またそうした命令がいかなる形式でどのような集団・個人に宛てて発せられたかを読み解き、3世紀から4世紀にかけての皇帝立法の史的展開を明らかにする。 次いで、5世紀前半に『テオドシウス法典』が編纂された際に採用された、皇帝の勅法の収録基準の背景を検討する。『テオドシウス法典』では、ディオクレティアヌスの時代までは主流であった、個別的な立法たる勅答形式での勅法を有効な法律とは見なさず、収録対象から除外している。こうした収録基準がいかなる理由で採用されたかを解明することが目的となるであろう。
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Research Products
(3 results)