2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J00241
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
島埜内 恵 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 移民教育政策 / フランス共和国 / 出身言語・文化教育(ELCO) / 多文化教育 / 複言語主義 / 欧州連合(EU) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、移民受入国と送出国の二国間の連携による移民教育政策について検討することである。その際、歴史的な移民大国であるフランスが、9カ国の移民送出国(ポルトガル、イタリア、チュニジア、モロッコ、スペイン、セルビア・クロアチア・トルコ、アルジェリア)との二国間協定を基盤として行う「出身言語・文化教育(Enseignements de langue et de culture d’origine:以下、ELCO)」政策を分析の対象とする。 1973年に導入されたELCO政策とは、移民送出国が採用、派遣、給与負担するELCO教員によって、主に9カ国出自の子どもを対象に行われてきた出身国の言語や文化の教育である。この教育は、①フランスの社会や学校への迅速な統合、②出身国とのつながりの保持、という2つの目的を持って開始された。 今年度は、フランス側と協定締結国側の双方によるELCO政策への認識やその連携体制の把握(課題1)、およびELCO政策の運用や実際のELCOの授業等に関する実態の把握(課題2)を中心とした。前者については、フランスと協定締結国が合同で実施する協議会の定期的な開催や、協定締結国間での協力体制の存在、フランスとの連携に関して協定締結国によって認識されている課題、そしてフランスの行政職員と協定締結国から派遣されるELCO教員の連携体制に関する実態等が明らかとなった。後者については、ELCO教員としてフランスに派遣されるまでの流れや研修、ELCOの授業に用いる教材や方法、ELCOの授業が行われる学校でのフランス人教員との連携の有無や授業に参加する児童・生徒の現状等を把握できた。 これまであまり明らかにされてこなかったフランスと協定締結国との連携体制やELCOの運用実態を、部分的ではあるものの明らかにした点が平成26年度に実施した研究活動の意義であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では移民受入国と送出国の二国間連携による移民教育政策について検討することが中心的な課題であるため、政策の実施国であるフランスと同時に、協定締結国を調査対象とすることは必須である。またその実態を把握するには、公文書や資料等の分析を踏まえた上でのインタビュー調査が有用であると考えられる。 現時点では、フランス側はトルコのELCOを管轄する行政職員へ、協定締結国側はイタリアとポルトガルの大使館および領事館の担当者、そしてELCOの授業を担当するトルコ人教員へのインタビュー調査をそれぞれ実施した。これらの調査の実施によって「研究実績の概要」に記した点が明らかとなった。以上の理由により、「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、さまざまな水準のフランス側のELCO担当者やその関係者(国民教育省職員、大学区職員、ELCOを開講する学校の学校長やフランス人教員等)、およびイタリアやポルトガル、トルコに加えてそれ以外の協定締結国を対象とした調査を進める予定である。これらを踏まえて課題1と課題2の検討を引き続き行った上で、移民受入国と送出国の二国間連携による移民教育政策について検討することを通して「平等」で「公正」な教育について考究する、という課題3に取り組みたい。
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