2015 Fiscal Year Annual Research Report
発達障害に基づく学習困難を規定する認知要因と環境要因の解明、および支援方法の構築
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14J00317
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 詩乃 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 発達障害 / 学習困難 / 学習支援 / MSPA / 特別支援教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発達障害の学習困難を規定する認知要因と環境要因の解明、および支援方法の構築を目的とする。平成27年度には、以下のような計画に取り組んだ。 計画1「学習支援の実施」として、京都大学こころの未来研究センターの「発達障害の学習支援・コミュニケーション支援」プロジェクトにおいて、発達障害の子どもを対象に、継続的な学習支援を行った。また、1名の左前頭葉脳腫瘍を摘出した子どもを対象に、発達障害の子どもへの支援ノウハウを応用して学習支援を行った。さらに支援を通して研究協力者とラポール(信頼関係)を形成し、その関係をベースに共同研究者らと実験的な基礎研究を行った。 計画2「包括的な学習困難の実態像を明らかにする」ことを目的とし、認知特性に基づく一次的な学習困難の検討を行った。読み書き障害の子どもは、トレーニングにより文字が読めるようになっても、単語全体読みに困難があるために、文章の読み等に苦手さがあることが示された。 計画3「言語や文化などの環境要因が、学習困難に与える影響を解明」を目的として、発達障害の認知特性と言語や文化といった環境要因の相互作用を解明するため、英国の共同研究者と準備を進めた。 計画4「地域における支援体制の構築」については、受入研究者が代表を務める実装支援プログラム「発達障害者の特性別評価法(MSPA)の医療・教育・社会現場への普及と活用」に関わる当初の目的を達成できると考えている。MSPAは、発達障害の包括的な支援を行う上で、有効なツールであり、またMSPAの習得は発達障害の正しい理解にもつながる。MSPAを通じて人材育成をすることで、全国規模で、支援者を育成することができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・昨年度に引き続き今年度も個々の特徴に合わせた支援を継続的に行い、特性に合わせた支援のノウハウを蓄積した。また症例報告が少ない左前頭葉脳腫瘍を摘出した子どもを対象に、継続的な学習支援を行った。こうした事例をまとめて発信していくことで特別支援教育に貢献できると考えられる。 ・ストループ効果を用いた単語全体読みによる読み書き困難特性の評価についての論文は、現在、国際誌に投稿中であり、小改訂を行っている最中である。 ・英国の共同研究者と、定期的に、研究計画等について情報・意見交流をし、準備を進めている。 ・受入研究者が代表を務める実装支援プログラム「発達障害者の特性別評価法(MSPA)の医療・教育・社会現場への普及と活用」においても、これまでの学習支援実践の経験を活かして参加しており、実装支援研究が進むことで、本研究計画でもある「地域における学習困難に対応できる人材の育成」が遂行されると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画1「学習支援の実施」では、引き続き発達障害の子どもを対象に、個々の特徴に合わせた支援を継続的に行い、特性に合わせた支援のノウハウを蓄積し、発信していくことを考えている。 計画2「包括的な学習困難の実態像を明らかにする」では、これまで学習支援を行ってきた子どもを対象に、認知的な基礎実験をすることを予定している。 計画3「言語や文化などの環境要因が、学習困難に与える影響を解明」では、英国での研究実施(海外への滞在・渡航に際して注意喚起が出されているため共同研究者による実施を想定)を行うことを予定している。 計画4「地域における支援体制の構築」では、受入研究者が代表を務める実装支援プログラム「発達障害者の特性別評価法(MSPA)の医療・教育・社会現場への普及と活用」において、支援につながるアセスメント方法を普及するほか、効果的な支援方法についての発信し、地域における支援体制の構築を目指す。 その他、本研究により得られた結果や、博士課程在学時に得られた結果を学術論文にまとめ、また国内外の学会で発表することを予定している。
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Research Products
(9 results)