2014 Fiscal Year Annual Research Report
確率的固有値分布推定を用いた非線形固有値問題の並列計算手法
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14J00374
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前田 恭行 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 固有値問題 / 固有値数計算 / Sakurai-Sugiura法 / Krylov部分空間反復法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,「研究目的1.確率的固有値分布推定法の高速化・高精度化」,及び「研究目的2.確率的固有値分布推定法を用いた固有値解法のパラメータ設定」を実施した. 項目1について,確率的固有値分布推定法とKrylov部分空間反復法を組み合わせ,少ない反復回数で固有値の分布が推定できることを明らかにした.これにより確率的固有値分布推定法の高速化が期待できる.また,現在台湾の国立台湾師範大学で研究されている光結晶の構造解析に対して,確率的固有値分布推定法を利用し高速に固有値の分布が得られることを明らかにした.この研究に関するポスター発表を日本応用数理学会2014年度年会で行い,論文をJSIAM Lettersに投稿した.現在は国立台湾師範大学と協力関係の元で研究を行っている. 項目2について,現在スペインのバレンシア工科大学で開発されている並列固有値計算ライブラリSLEPcの中に本研究代表者らによって作成されたCISSという固有値計算プログラムが組み込まれている.本研究では確率的固有値分布推定法をCISSに組み込む実装を行い,効率的なパラメータ設定を可能にした.この研究に関する口頭発表をスイスで行われた国際学会PMAA14で行った.現在はバレンシア工科大学と共同でCISSの開発を行っている. また,現在アメリカのパデュー大学で開発されている原子構造モデリングソフトウェアNEMO5で現れる固有値問題に対して,CISSを適応させ,高速に固有値・固有ベクトルが求められることを明らかにした.そして11月にNEMO5上でCISSを利用するための打ち合わせをパデュー大学で行った.現在はCISSをNEMO5で組み込むための研究をパデュー大学と協力関係の元で行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究目的1.確率的固有値分布推定法の高速化・高精度化」について,確率的固有値分布推定法とKrylov部分空間反復法を組み合わせることで,高速化が可能となることを明らかにした. また「研究目的2.確率的固有値分布推定法を用いた固有値解法のパラメータ設定」について,ソフトウェアライブラリSLEPcに組み込まれている固有値解法に対して確率的固有値分布推定法の実装を行い,固有値解法の効率的なパラメータ設定を可能にした. これらの結果は交付申請書の研究実施計画書に記載した内容を満たしている. また,国立台湾師範大学で研究されている光結晶の構造解析や,パデュー大学で開発されているソフトウェア,バレンシア工科大学で開発されているソフトウェアに対して,確率的固有値分布推定法を含めた固有値解法の応用の研究が国際的な協力関係のもとで進められており,平成27年度の研究計画であった「研究目的3.様々な分野への応用」に進展している. 以上のことから,本研究の達成度は当初の計画以上に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した「研究目的3.様々な分野で発生する固有値問題に対して確率的固有値分布推定法を含む固有値解法の適用及び性能評価」を実施する. 研究実施の概要で示した国立台湾師範大学で研究されている光結晶の構造解析やパデュー大学で開発されている原子構造モデリングソフトウェアNEMO5に関する知識を蓄える.それぞれの分野で現れる固有値問題に対して,CISSによる固有値計算を実用段階まで高速化させる実装を行い,これらの分野の発展を促す. 本研究で得られた結果を国際会議および国内学会で発表し,学術論文としてまとめる.
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Research Products
(2 results)