2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J00389
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 より子 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | アミノ酸 / 骨格筋 / 遅筋 / 筋線維型 / mTOR |
Outline of Annual Research Achievements |
分岐鎖アミノ酸は、mTOR シグナル伝達経路を介してタンパク質合成や遺伝子発現を促進する作用を有する。また、その長期摂取は、寿命の遅延や骨格筋のミトコンドリア生合成を促進する。本研究では、単一のアミノ酸(ロイシン)投与でも筋細胞の mTOR を活性化させれば、筋線維の遅筋的特性、ミトコンドリアの酸化的代謝能が強化されるとの仮説のもと、以下の実験を行った。18時間絶食させた5週齢の雄性 Wistar ラットに、ロイシンを強制的に胃内投与 (135mg / 100g B.W.) し、ヒラメ筋の mTOR 経路が活性化されることを確認した。さらに、qRT-PCR にて遺伝子発現を定量すると、ロイシン投与3時間後のヒラメ筋では、遅筋の特性に関連する一部の遺伝子の発現量が有意に増加していた。また、速筋の構造タンパク質を制御する転写因子 Myod は有意に減少していた。このことから、ロイシン摂取は遅筋の特性に関連する遺伝子の発現を選択的に増加させると考えられる。また、マウス筋芽細胞株 C2C12 を用いて、ロイシンによる遺伝子発現制御が mTOR シグナル伝達経路を介するか否か検討した。C2C12筋管を HBSS 培地で3時間培養し、ロイシンと mTOR の阻害剤であるラパマイシンを添加後した。qRT-PCR の結果、ロイシンを添加された筋管では、遅筋の特性に関連する遺伝子の発現量が有意に増加した。また、この作用はラパマイシンの同時添加により抑制されたことから、ロイシンによる遺伝子発現制御は、mTOR シグナル伝達経路を介していることが明らかとなった。以上から、ロイシンによるmTOR経路の活性化により遅筋遺伝子を含めた特定の遺伝子の発現のみ増加する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画では、アミノ酸の長期摂取試験を予定していたが、単回摂取でも骨格筋の特性が変化しうるか確認した。特に、ロイシン摂取は一部の遅筋に関連する遺伝子発現を特異的に増加させることが明らかになった。また、培養筋管を用いて実験から、ロイシン添加による筋特性に関連する遺伝子発現の変化が mTOR 経路を介することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の展開として、「筋細胞内でのアミノ酸の感知」と「アミノ酸が筋線維を取り巻く環境(主に毛細血管)へ及ぼす影響」に取り組む予定である。Leucyl-tRNA synthetase cytosolic(以下、Lars1)は、細胞内のロイシンのセンサー分子であり mTOR シグナル伝達経路の活性化に関与すると報告されている (Han, Mol. Cell, 2012)。しかし、HEK 細胞以外の細胞でも同様にロイシンのセンサーとして機能しているか、また遺伝子発現に及ぼす影響は不明である。現在、C2C12 筋管 への Lars1 のノックダウン実験により、筋細胞でもロイシンのセンサーとして機能するか検討している。また、アミノ酸摂取が筋線維の特性だけでなく、細胞外の毛細血管へ影響を及ぼすか否か、パデュー大学の Dr. Gavin と共同研究を行う予定である。
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