2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J00389
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 より子 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | アミノ酸 / 骨格筋 / 筋線維型 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究から、研究代表者は分岐鎖アミノ酸の一つであるロイシンが mTOR シグナル伝達経路を介して、骨格筋の筋線維型や代謝特性に関連する遺伝子の発現を制御する可能性を見出した。次年度の研究では、ロイシン摂取が遺伝子の転写後発現調節を担う短鎖非コード RNA (microRNA, 以下 miRNA) の発現に及ぼす影響について検討することにした(本研究は、米国パデュー大学 Dr. Timothy Gavin との共同研究として実施した)。 マウスへのロイシン経口投与 (135mg / 100g B.W.) は、投与前と比較すると、遅筋であるヒラメ筋おいて miR (1,133a/b) 及び前駆体である pri-miR133a の発現量を増加させた。一方、速筋である長趾伸筋では、ロイシン投与は miR (206, 208b, 499b) の発現量のみ有意に増加させた。これらから、ロイシン投与が miR の発現に及ぼす影響は遅筋と速筋で異なると考えられる。次に、 Mlc-mTOR-/- マウスを作製し、その表現型を確認した。先行研究の結果 (Risson, J. Cell Biol., 2009) と同様に、Mlc-mTOR-/- マウスでは筋萎縮と遅筋の特性に関連する遺伝子群 (Cox7, Myogloblin) の発現が減少していた。このマウスを用いて、生体レベルで mTOR 経路が miRNA の発現に及ぼす影響について調べることにした。qRT-PCR の結果、Mlc-mTOR-/- マウスのヒラメ筋、長肢伸筋の両筋肉中で miR133a 、前駆体である pri-miR133a の発現量が減少していた。即ち、mTOR 経路が miR133a の発現・成熟に影響を及ぼすと考えられる。MiR133a 欠損マウスの骨格筋では、ミトコンドリアの機能不全やそれに伴う筋疾患が報告されている (Liu, J. Clin. Invest., 2011)。即ち、ロイシン摂取によるmTOR 経路の活性化が miR133a の発現を介して、骨格筋中のミトコンドリアの恒常性を維持している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、計画2年目までに骨格筋特異的 mTOR 欠損マウスを作製し、ロイシン摂取による骨格筋の線維型や代謝特性の変化について生体レベルで検証する予定であった。Mlc-mTOR-/- (骨格筋特異的 mTOR 欠損マウス)を用いた研究成果から、ロイシン摂取が骨格筋中の代謝特性に関連する mRNA のみならず、ミトコンドリアの恒常性維持に関連する miRNA (特に、miR133a) の発現を mTOR 経路を介して制御していることがわかった。特に、miRNA の発現制御機構については不明な点が多く、アミノ酸栄養が直接的に骨格筋中の miRNA の発現・成熟に関与することを示す重要な知見を得たと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究により、ロイシン摂取は mRNA のみでなく microRNA (特に、miR133a) を介して骨格筋の特性を制御している可能性を見出した。一方で、筋細胞中でロイシン摂取による mTOR 経路の活性化により発現制御される miRNA は他にも多数存在すると考えられる。ロイシン摂取により発現制御される miRNA を網羅的に探索するため、Mlc-mTOR-/- マウス骨格筋または単離した Mlc-mTOR-/- 筋芽細胞について miRNA マイクロアレイを行う予定である。 また、近年、細胞分泌小胞であるエクソソーム中にも miRNA が存在しており、同種(異種)細胞間での情報伝達に使われる可能性が示唆されている。現在までに、専用のキット及び超遠心分離により C2C12 培養筋管の培地からエクソソームを単離し、miRNA の発現について試験的に調べている。TEM 及びエクソソームマーカータンパク質の発現解析から、エクソソームの単離は確認できた。まず、エクソソーム中の miRNA の定量に適した内部標準分子の選定を行っている。内部標準分子を選定できれば、C2C12 培養筋管 へのmTOR 阻害剤(ラパマイシン)添加試験、Mlc-mTOR-/- から単離した筋芽細胞を用いて、エクソソームの解析を進めていく予定である。
|