2014 Fiscal Year Annual Research Report
無衝突降着円盤における磁気回転不安定性の電磁流体解析
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14J00394
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平林 孝太 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 温度異方性 / 無衝突プラズマ / 磁気流体モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
無衝突プラズマ中で生じる温度の非等方性を流体の枠組みで記述するために、磁場に平行方向と垂直方向の2つの温度成分のみを考える「二重断熱近似」が、その簡便さから従来よく用いられてきた。一方でこの近似のもとでは、断熱不変量の分母に磁場強度が現れる等の制約により、磁場が存在しない領域を取り扱うことが難しかった。この問題は、降着円盤において磁気回転不安定性が駆動する磁気リコネクション中に現れる磁気中性面や、円盤内で閉じた磁力線を考える場合のコロナ領域など、磁場が非常に弱い環境での数値的な困難をはらんでおり、二重断熱近似に替わって磁気中性領域での温度異方性を無理なく記述する無衝突磁気流体モデルを構築する必要がある。 そこで本研究では、非対角成分まで含めた圧力テンソルを時間発展させるための状態方程式を磁場強度に依らない形で新たに定式化し、保存型シミュレーションコードに実装した。現在コードのテストを兼ねて磁気リコネクション問題の2次元計算を行っている。特に運動論の線型解析から、初期プラズマシートに存在する温度異方性に応じて磁気リコネクションの成長率が大きく増減することが知られており、異方性を考慮した磁気流体でも同様の依存性が得られるか精査する予定である。磁気回転不安定の飽和レベルを左右する磁気リコネクションと温度の非等方性との関係を整理・理解しておくことは、無衝突降着円盤の大規模計算を行う前段階として極めて重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無衝突降着円盤の1次元ないし2次元グローバルシミュレーションを実施するには至らなかったが、それらを行うにあたって必要となる磁気中性領域・弱磁場領域での温度非等方性の取り扱いに関して、既存のアプローチの問題点を克服した新たな基礎方程式の定式化・シミュレーションコードへの実装が完了した。この定式化を採用することで、磁気中性領域が安定して取り扱えるのみでなく、温度非等方性の緩和モデルを制御することにより無衝突領域から衝突領域への遷移もより明確に記述することができ、当初の計画と比しても優れた数値モデルの構築に成功したといえる。 また有限差分法を用いているため、高次精度を保持したままでも円筒座標系など他のセットアップへの拡張自体に大きな困難はなく、コードテストの後に比較的速やかにグローバルシミュレーションの実施が可能であると考えられ、開発状況はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
温度非等方性を新たに定式化したコードを用いて磁気リコネクションと異方性の関係を整理したのち、再び磁気回転不安定性の数値シミュレーションを開始するが、当初の研究計画を修正し、円盤全体を解く大局計算に先んじて、円盤の垂直重力を考慮して厚み方向の全体構造のみを取り入れた"半グローバル"シミュレーションを行う。これにより円盤内で卓越する磁気回転不安定や磁気リコネクションと、円盤から磁束を引き抜くパーカー不安定との競合過程、その中で温度非等方性がダイナミクスに与える影響などを円盤全体の大局計算と比較してより緻密に議論することが可能となる。なお3次元計算を実施する際には、グローバル計算では現れないシアリング周期境界という特殊な境界条件を使用する必要があるが、既に局所計算で作成済みのモジュールを流用できるためむしろ開発コストは小さく済むと予想され、2次元を省略して3次元計算からスタートすることを予定している。
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Research Products
(7 results)