2015 Fiscal Year Annual Research Report
無衝突降着円盤における磁気回転不安定性の電磁流体解析
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14J00394
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平林 孝太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 無衝突磁気流体 / 無衝突降着円盤 / 磁気流体乱流 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず当該年度前半は、降着円盤中の赤道面内においてトロイダル磁場の非一様性によって駆動される新しい不安定性を、線型固有値解析および非線型数値シミュレーションを用いた研究により提案し、成果をまとめた論文がThe Astrophysical Journalに受理された。本不安定性がもたらす磁気流体乱流は、あるパラメータの下では従来考えられてきた磁気回転不安定性に匹敵する高い角運動量輸送効率をもたらす可能性があり、差動回転によってトロイダル磁場が十分に発達した降着円盤のダイナミクスを考える上で非常に重要となる。 当該年度後半は主に、前年度より継続して開発を進めていた温度非等方性を取り扱う新しい磁気流体モデルについて、Vlasov方程式からの基礎方程式の導出、数値シミュレーションコードへの実装、テスト計算例などを論文としてまとめ、Journal of Computational Physicsに投稿、現在査読中である。また本モデルを用いて、無衝突降着円盤の鉛直方向重力まで考慮した3次元局所シミュレーションに取り組んでおり、従来の等方温度での磁気流体計算と同様に、磁気回転不安定性によって駆動される乱流生成と、ダイナモ作用により増強されたトロイダル磁場などが観測されている。また円盤回転周期の10倍程度でのトロイダル磁場の反転など、基本的な描像は共通していると言えるが、一方で角運動量輸送効率の観点では従来の計算と比較して半分程度まで下がっており、ダイナモ駆動の長スケール磁場のエネルギーも一桁程度低下することがわかってきた。 本研究の計算は、降着円盤の大局的スケールを含んだ無衝突降プラズマシミュレーションとして世界初であり、今度結果を精査することにより無衝突系における乱流生成およびダイナモ作用に関する理解を大きく前進させることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に開発した無衝突磁気流体シミュレーションコードでは、ソース項の取り扱いの不整合により物理的に正しくない解を返す可能性や、HLLリーマン解法の性質上磁場が弱い領域で極めて散逸的になってしまうなどの問題点があった。近年提唱されたHLLEMリーマン解法の登場によりこれらの問題を回避できることがわかり、既存の高解像度スキームが適用できない温度非等方性の存在下でも、磁気流体乱流の高精度な計算が行えるようになった。これらを実装済みのコードを用いて、当該年度には世界初となる円盤スケールを含んだ無衝突降着円盤の3次元局所シミュレーションに成功しており、進捗状況は概ね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度はまず、国立天文台の並列計算機を用いて、これまでに成層を考慮した計算で得られた結果のグリッド収束性を調査する。降着円盤の局所シミュレーションではグリッド収束自体がしばしば問題となり、特に領域全体で平均した磁束がちょうどゼロとなるような計算において、成層を考慮したシミュレーションでは収束が得られると結論づけるグループと、より高解像度の計算により収束は得られていないとするグループが存在し、未解決問題として残っている。本研究で開発したコードは温度非等方性の考慮以外にも、5次精度スキームの採用により2次・3次を基本とした既存のパブリックコードに比べてグリッド収束が非常にはやいという強みがあるため、本問題に対して極めて有用なツールとなると期待される。 続いて、温度非等方性を考慮した磁気流体によるパラメータサーベイを行い、磁気回転不安定性・乱流生成・ダイナモの相互作用の観点から、無衝突降着円盤中のダイナミクスにおける温度非等方性の役割を整理する。特に、これまでに低解像度の計算から得られている初期結果、すなわちダイナモの抑制による磁気エネルギーの低下および角運動量輸送効率の減少などについて、上記のグリッド収束性に関する結果を踏まえて高解像度計算を行い、必要十分な解像度において初期磁場の強さやトポロジー、また鉛直方向境界条件の影響などを精査する。
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Research Products
(3 results)