2014 Fiscal Year Annual Research Report
読み書きの習得に影響する認知要因と環境要因に関する縦断研究
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14J00426
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
猪俣 朋恵 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 読み書き / 認知能力 / 環境要因 / 読書 / 小学生 / 発達性読み書き障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1:典型発達児における読み書き到達度に影響する認知能力と環境要因、およびそれら双方の相互関係について明らかにすることを目的としている。平成26年度は、縦断研究4年目の調査を行った。幼児期から追跡している小学校1-3年生の典型発達児とその保護者を対象に、夏休み期間中の7日間にわたり調査を行った。研究補助者とともに児童のデータ収集を行い、221名のデータを収集した。児童が課題を行っている間、保護者には質問紙に回答してもらった。調査終了後、データ入力、確認を行い、データ分析の前準備を行っているところである。 調査と並行して、昨年までのデータを再分析し直した。その結果、小学1年生のひらがな音読においては、自動化能力に加えて、幼児期の本への接触頻度が高いほど、単語や文章の音読速度が速くなる傾向が明らかとなった。本への接触は、単語をまとまりとして読む音読方略の発達に貢献している可能性が示された。さらに、小学1年生のひらがな書取においては、音韻認識に加えて、幼児期の本への接触頻度が、無意味語の書取成績を有意に予測した。ひらがな音読の熟達度を反映していると考えられる速読成績を独立変数に含めても同様の結果が得られ、速読成績は書取成績を予測しなかった。したがって、文字に接する機会が多いほど、文字表象の発達が促される可能性が示唆された。現在、再解析を行った結果を国内外の学術雑誌に投稿するため、論文執筆中である。
研究2:発達性読み書き障害児数名を対象とし、認知課題成績が同程度に低い場合に、読み書き到達度の分散に関わる環境要因を保護者に対する質問紙調査から明らかにすることを目的としている。平成26年度は、来年度本格的に調査を行えるよう、準備を行った。典型発達児を対象とした調査にて使用している質問紙を土台として、質問項目を選定しているところである。また、調査対象者候補を何名か挙げ検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年に一度行っている追跡調査を予定通り実施し、小学1年生から3年生までの児童約220名のデータを収集できた。昨年までのデータについて、確認、再解析を行い、現在論文を執筆中である。来年度の追跡調査や発達性読み書き障害児を対象とした調査の準備も始めており、概ね順調に研究が進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1:来年度も追跡調査を継続し、5年目の調査を行う。例年同様、典型発達児とその保護者を対象に、夏休み期間中の約8日間にわたりデータ収集を行う。小学校2-4年生約200名のデータが追加される予定である。前年までのデータと新たに追加されるデータについて統計解析を行い結果をまとめる。調査と並行して、前年までの研究成果を原著論文、学会等で発表する。 研究2:発達性読み書き障害児やその疑いがある児童の保護者に対する質問紙調査を開始する。
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