2014 Fiscal Year Annual Research Report
自己変容に対する志向性の発達過程-自己変容の予期に伴う葛藤の解決に向けて-
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14J00430
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
千島 雄太 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 自己 / 葛藤 / 発達 / 青年期 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,研究計画の通り,青年期と青年期以降の自己変容に対する志向性の発達(研究1)に取り組んだ。この研究は,これまでの先行研究において,青年期のデータによって青年期的特徴を捉えていたことの問題を取り上げ,生涯発達の観点によって,青年期特有の心性を明らかにするという目的を有している。 調査方法としては,クロスマーケティング社にWeb調査依頼した。調査対象者は計997名(男性484名, 女性513名, 平均年齢33.66歳, SD = 14.57)であった。調査項目は,1. 自己変容に対する志向性(5項目),2. 自己変容への関心(3項目),3. 自尊感情(10項目),4. 内省頻度(5項目)であった。これらの項目について,“以下の項目は,現在のあなたにどの程度あてはまりますか?もっともあてはまると思うものを,選択してください。”と教示し,5件法による回答を求めた。 年代を,“高校生”,“大学生”,“20代”,“30代”,“40代”,“50代”,“60代”の7群に分けた。年代と性別の二要因分散分析を行った結果,全ての得点で,年代の主効果が有意であった。多重比較の結果,自己変容に対する志向性や関心は,年代が上がるごとに低下することが明らかにされた。これは,先行研究(Rice & Pausupathi, 2010)の指摘を支持する結果となった。また,自尊感情の生涯発達に関しても,先行研究(Orth, Maes, Schmitt, 2015; Orth, Robins, & Widaman, 2012; Robins, Trzesniewski, Tracy, Gosling, & Potter, 2002)と同様に,60代で最も得点が高かった。 本研究で得られた生涯発達に関するデータは,青年の「変わりたい」という気持ちを,発達的観点から説明する価値の高い資料である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画として,1年目は,青年期と青年期以降の自己変容に対する志向性の発達(研究1)を実施するとともに,3月に自己変容に対する志向性の環境移行に伴う変化の短期縦断的検討(研究2)を開始するという計画であった。 このうち,研究1は計画通り,青年期と成人期のデータを重ね合わせることで,生涯発達に関する重要な知見を見出した。研究2については,短期縦断的調査の実施準備が整いつつあり,2年目から実施する予定である。 また,これらの研究を遂行するに当たって,必要な統計的知識を深めることも計画に含まれていたが,順調に知識を習得している。以上の理由から,現在までは研究がおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究計画に従って,研究2の短期縦断調査を実施するとともに,研究3の自己変容の葛藤を可視化するツールを開発する。その上で,葛藤を可視化することで,どのようなリフレクション効果があるかについて,実証的に検討を行う予定である。 これらの研究が終了した後には,研究で得られた知見を統合し,青年期の自己変容に対する志向性の発達に関して全体的考察を行う。さらに,論文執筆,学会発表等を通して,得られた知見をもとに提言を行っていくとともに,研究協力者への研究結果のフィードバックを行う。
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