2014 Fiscal Year Annual Research Report
繊毛/鞭毛内腕ダイニンの規則的周期性を規定する因子の探索
Project/Area Number |
14J00436
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 遼介 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 繊毛 / 鞭毛 / クラミドモナス / 内腕ダイニン / pf23 |
Outline of Annual Research Achievements |
繊毛/鞭毛軸糸内腕ダイニンの規則的周期性を規定する因子決定の手掛かりを探るため、今年度は2本の鞭毛を持つ単細胞緑藻クラミドモナスの内腕ダイニン欠損変異株pf23の遺伝学的・生化学的・構造学的な解析を主として行った。pf23株は鞭毛軸糸に存在する7種 [a, b, c, d, e, f, g] のメジャー内腕ダイニン種のうち、4種 [a, c, d, f] を欠損する変異株として30年以上前に報告された(Huang et al., 1979. J Biol Chem 254(8):3091-3099)。遺伝学的な解析から、pf23株の原因遺伝子は意外なことに細胞質性のタンパク質をコードするもので、このタンパク質は細胞質内での内腕ダイニンの集合に必要であるらしいことが分かった。また、pf23株鞭毛軸糸の生化学的な解析により、pf23株は内腕ダイニンだけではなく、鞭毛外腕ダイニンにも軽微な欠陥を持つこと、ならびにpf23株鞭毛軸糸では内腕ダイニン種 [a] 以外のほぼ全てのメジャー内腕ダイニン種が大幅に減少していることを示唆する結果を得た。クライオ電子顕微鏡観察法とサブトモグラム画像平均法を用いたpf23株鞭毛軸糸の構造学的解析から、低解像度ではあるが、pf23株の内腕ダイニンの欠損を可視化することが出来た。今後は、構造学的解析を更に続け、高解像度で各種内腕ダイニンと繊毛/鞭毛軸糸微小管の結合部位構造を決定することで、内腕ダイニンの規則的周期性を規定する因子の実体に迫りたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2本の鞭毛を持つ単細胞緑藻クラミドモナスをモデル生物として用い、その長所 (大量培養が可能・鞭毛の単離が容易・遺伝学が使用可能) を利用して、内腕ダイニン欠損変異株pf23の解析を通して繊毛/鞭毛内腕ダイニンの規則的周期性を規定する機構の探索を行った。筑波大学下田臨海実験センターにてクラミドモナスの安定培養および鞭毛単離の系を立ち上げることに成功し、pf23株の遺伝学的・生化学的な解析におけるアメリカ合衆国エモリー大学・ワシントン大学・コネチカット大学医学センターの研究者達との共同研究、およびスイス連邦ポール・シェラー研究所の研究者との構造解析における共同研究も順調に進んでいる。今後は、構造学的な解析を更に進め、各種内腕ダイニンと繊毛/鞭毛軸糸微小管との結合部位がどのような構造を取っているのかを決定していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、クラミドモナスの内腕ダイニン欠損変異株の解析を通して、内腕ダイニン繊毛/鞭毛軸糸の96 nm周期性を規定する因子の本質に迫ろうとした。来年度は、本年度に引き続いてpf23株鞭毛軸糸のクライオ電子顕微鏡観察およびサブトモグラム平均画像作成を行い、pf23株と野生型との比較から、各種内腕ダイニンの繊毛/鞭毛軸糸微小管への結合部位構造を高解像度で明らかにすることで、96 nm周期を規定している機構に迫りたい。また、最近2つのCoiled-coilタンパク質 (CCDC39とCCDC40) が繊毛/鞭毛の96 nm周期の「ものさし」になっているという研究が報告された (Oda et al., 2014. Science 346(6211):857-860)。この仮説の妥当性の検証と併せて、「これらのCoiled-coilタンパク質がどのようにして7種類の内腕ダイニンが結合する『座』を決定しているのか」、「これらのCoiled-coilタンパク質と各種内腕ダイニン尾部はどのように結合/関連しているのか」、そして「クラミドモナスの2本の鞭毛 (cis鞭毛とtrans鞭毛) の間では内腕ダイニンの結合様式や並び方、およびその構造に違いがあるのか」等も遺伝学・生化学・構造生物学等を組み合わせて明らかにしていきたいと考えている。
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