2014 Fiscal Year Annual Research Report
夜行性魚類ハタンポ属の分類学的再検討および形態・分布・生活史の進化
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14J00477
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小枝 圭太 鹿児島大学, 総合研究博物館, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ハタンポ属魚類 / 生活史 / 夜行性魚類 / 魚類相 / 琉球列島 / 日本初記録 / 行動観察 / 博物館所蔵標本 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 鹿児島県におけるハタンポ属魚類の生活史に関する研究 鹿児島県肝付町の内之浦漁港、笠沙町の笠沙漁港、種子島の3定点からハタンポ属魚類3種を経月的に収集した。ミナミハタンポは一度の調査で0~約250個体、ミエハタンポは0~10個体、リュウキュウハタンポは0~5個体とミナミハタンポが最も個体数の多い種であることが明らかとなった。採集した標本を研究室に持ち帰ったのち、体長、体重を測定し、生殖腺の外観から雌雄を判別した。その後、各月に最大でも50個体を解剖し、生殖腺の重量から種、月、採集場所毎に生殖腺指数を算出した。その結果、各種の各採集場所における産卵期や最小成熟体長が明らかになるとともに、採集場所の違いによる産卵期の違いやミナミハタンポの二型の間でみられる産卵期の違いが明らかとなった。 2. 鹿児島県の島嶼域を中心とした標本収集 鹿児島県肝付町内之浦漁港に10回(約20日間)、種子島に8回(約25日間)、笠沙町に5回(約5日)、口永良部島、中之島、奄美大島、徳之島、与論島、沖縄島、南大東島、西表島、台湾、フィリピンに各1回(3~10日)の魚類標本の採集調査をおこない、2500個体以上の標本を採集した。採集個体は同定後、転鰭、写真撮影、固定作業を行い鹿児島大学総合研究博物館の魚類分類学研究室に登録した。これらの過程で、南大東島で採集したハナスズキ属が日本からの標本に基づく初めての記録となったとともに、いくつかの種を鹿児島本土や奄美大島からの初めての記録となった。 3. 夜行性魚類の夜間の行動 沖縄島真栄田岬沖合の調査区域でハタンポ属と同じ夜行性魚類であるイットウダイ科テリエビスの観察調査をおこなった。その結果、ハタンポが日没後1時間で最大1.5 kmもの距離を移動したことに対し、テリエビスではほとんどの時間を半径10 m以内の狭い範囲で過ごすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新しい環境における初年度であることから、フィールドでの採集方法や採集場所の確立、人脈の形成に半年は必要だと想定していた。しかし、鹿児島大学総合研究博物館の本村浩之氏をはじめとする、鹿児島大学の関係者の方々や、魚類分類学研究室のメンバーのもつ人脈、経験、知識に加え、鹿児島県の漁業関係者や地元住民のサポートにより、採集方法や採集場所をスムーズに確立することができた。そのため、想定以上のスピードで研究活動を軌道に乗せることが可能であった。また、魚類分類学研究室の主に鹿児島県の島嶼域における魚類相調査に積極的に参加したため、これまでの沖縄県における経験と併せて琉球列島の生物相に対する理解を大幅にすすめることができた。このような経験を積むことは、実験や解析のみを行う研究活動のなかでは得ることのできないことであり、今後の研究活動において重要な能力となると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
鹿児島県におけるハタンポ属魚類の生活史に関する研究を継続するとともに、鹿児島県を中心とした島嶼の生物に関する知識と経験を深めることに重点を置き研究活動を進める。また、鹿児島だけでなく、五島などの本州の離島や小笠原諸島などを訪問し、これらの島嶼との違いを理解することで、自身のフィールド研究の幅を広げていく予定である。また、本年度に得た結果を積極的にまとめ、報告していくことにも重点をおいて研究活動をすすめていきたい。
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Research Products
(11 results)