2014 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄間葉系幹細胞を用いた移植用高品質軟骨様組織作製法の開発
Project/Area Number |
14J00491
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 康史 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 軟骨再生医療 / 間葉系幹細胞 / II型コラーゲン / 細胞シート / アスコルビン酸 / I型アテロコラーゲン / MMP13 |
Outline of Annual Research Achievements |
軟骨組織は自己修復能力が低く、再生医療による治療法の開発が必要である。当研究グループでは、間葉系幹細胞から軟骨様細胞シートの作製の検討を行っており、これまでに一定形状の軟骨様細胞シートを作製する方法の開発に成功している。一方で、細胞シート中の細胞外マトリックス(ECM)蓄積量が正常軟骨と比べ低く、特にⅡ型コラーゲンが0.1%と極端に低く、改善する必要が考えられた。そこで本研究では、軟骨様細胞シート中のECMを増加させるため、細胞シート中のECMの合成と分解に注目し研究を行った。そこで、アスコルビン酸やI型アテロコラーゲンの添加を検討した。 アスコルビン酸を通常の濃度の10倍濃度である250 μg/ml添加した場合、細胞シートの湿重量が約20%増加し、またⅡ型コラーゲンの蓄積量は大幅に増加した。I型アテロコラーゲンを0~50 μg/mlの濃度で添加した場合、細胞シートの湿重量に変化がみられなかった一方で、Ⅱ型コラーゲンの蓄積量は0.05~5 μg/mlで添加した条件で約2~3倍に増加した。さらにアスコルビン酸、Ⅰ型アテロコラーゲンの同時添加の結果、細胞シートの湿重量はアスコルビン酸添加群と同様に増加した。Ⅱ型コラーゲンの蓄積量は同時添加した条件では約8倍に増加し、これらの相乗的な効果が観察された。さらに、遺伝子の発現では、同時添加によりⅡ型コラーゲンの発現が約2倍に増加した。一方で、Ⅱ型コラーゲンを分解する酵素である、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)13の発現が約1/3に減少した。このことから、アスコルビン酸とⅠ型アテロコラーゲンの添加により、細胞内におけるⅡ型コラーゲンの合成促進および組織内部におけるMMP-13によるⅡ型コラーゲンの分解を抑制し、これらの2つの効果によりⅡ型コラーゲンの蓄積量が増加したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
間葉系幹細胞(MSC)から作製した軟骨様細胞シート中のⅡ型コラーゲン含量を増大させるべく、添加物を検討した結果、アスコルビン酸リン酸エステルとⅠ型アテロコラーゲンの添加においてそれぞれ約2倍、4倍と増大することを見出した。それだけではなく、これらを同時に添加した場合に約8倍にまで増大することも明らかにした。さらに、遺伝子発現解析により、これらの効果は単にⅡ型コラーゲン発現の増大だけでなく、分解系の低減化も含むことを推測するデータも得られ、今後の研究方針を示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において、間葉系幹細胞由来の軟骨様細胞シート作製において、アスコルビン酸リン酸エステルとⅠ型アテロコラーゲンの添加により、Ⅱ型コラーゲン発現の増大だけでなく、分解系の低減化も含むことを推測するデータも得られた。今後は、分解系の制御によるECM蓄積量増大のため、分解系の制御機構の解明と、分解系抑制因子の添加実験を行う方針である。 また、軟骨様細胞シートの治療効果検証のため、動物モデルにおける実験を進めていく方針である。
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Research Products
(6 results)