2015 Fiscal Year Annual Research Report
原子分解能が可能な強磁性共鳴を用いた磁気交換力顕微鏡の開発
Project/Area Number |
14J00522
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
有馬 英司 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | スピントロニクス / 磁性薄膜 / マイクロ波 / 磁気交換力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「物質表面に作用する磁気交換力を原子分解能で観察できる強磁性共鳴を利用した磁気交換力顕微鏡を開発」することである。具体的には、力学的な相互作用を検出することで試料表面の凹凸像とスピン像の混ざった像を得ることができる磁気交換力顕微鏡を応用する。周波数変調されたマイクロ波を磁性探針表面に照射し、強磁性共鳴を起こす。それによって探針の磁化が変調され、磁気交換力のみの原子レベルでの分離が可能になる。 本年度、この手法の実現のために①強磁性薄膜を蒸着した高保持力磁性探針の作製、②強磁性共鳴を用いた磁性体探針の磁化変調、③磁気交換力の原子レベルでの分離測定の3つの課題について重点的に研究を推進した。 ①の課題については、FePtを蒸着した高保持力で原子分解能を可能にする先鋭な磁性探針の作製に成功した。これは、磁性探針・磁性表面に働く磁気交換力を分離測定できる磁気交換力顕微鏡を開発ための重要な成果である。②の課題については、磁性体探針に近接場マイクロ波を照射し、磁性体探針を強磁性共鳴状態と非強磁性共鳴状態に交互にすることにより、磁性体探針の磁化を変調することに成功した。③の課題については、反強磁性体であるNiOの(001)表面を実際に取り上げ、表面の磁気情報を原子レベルで分離測定できることを示した。 当初の研究の目的をある程度達成できたと考えている。今後はさらに再現性を示すための実験やさらなる高感度測定を重点的に行っていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①強磁性薄膜を蒸着した高保持力磁性探針の作製、②強磁性共鳴を用いた磁性体探針の磁化変調、③磁気交換力の原子レベルでの分離測定の3つの課題について重点的に研究を推進した。磁気交換力を分離することに成功しており、今後はさらなる高感度化、異なる試料のスピン状態の観測を行う予定である。①の課題については、FePtを蒸着した高保持力で原子分解能を可能にする先鋭な磁性探針の作製に成功した。これは、磁性探針・磁性表面に働く磁気交換力を分離測定できる磁気交換力顕微鏡を開発ための重要な成果である。②の課題については、磁性体探針に近接場マイクロ波を照射し、磁性体探針を強磁性共鳴状態と非強磁性共鳴状態に交互にすることにより、磁性体探針の磁化を変調することに成功した。③の課題については、反強磁性体であるNiOの(001)表面を実際に取り上げ、表面の磁気情報を原子レベルで分離測定できることを示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針として、①さらなる高感度測定が可能なねじれモードを用いた観測、②試料表面上で単原子を操作することで人工的に原子数個の配列を作り出す、③作製した原子の構造体のスピン像を取得する。 ①の課題については、ねじれモードの定量的な感度の考察と探針の振幅との関係性が明らかになっていない。実験と理論計算を行うことで最適な振幅を求め、より高感度な測定を実現する。 ②の課題については、私が所属する研究室で長年研究されてきた原子操作のノウハウと技術を用いて、Co原子の列を作り出す。 ③の課題については、作製された構造体を熱的に安定させる必要がある。そのために液体Heを用いて4K以下まで冷やし、長時間の極低温観察が必要になると考えている。
|
Research Products
(3 results)