2014 Fiscal Year Annual Research Report
民俗社会における女性のインフォーマルな繋がりとその創造性に関する調査研究
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14J00586
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸邉 優美 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 女性 / インフォーマルな関係 / 女講中 / 嫁 / 経験 / 婚礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、牡鹿半島(宮城県石巻市牡鹿地区)におけるフィールドワークを中心として、女性同士の結びつきの多元性、集落コミュニティとの相関性を検討した。牡鹿半島の各集落では、女講中と呼ばれる講集団が女性の中心組織として活動していた。女講中には加入規則があり、全ての女性が入れるわけではなかった。ただし、こうした人々は社会的に女講中の講員と差別されていたわけではなく、協同作業や日常生活において同じように交際していた。組織集団にとらわれない関係の形成は、女講中衰退後の牡鹿半島社会における女性同士の繋がりを捉える上でも重要である。本研究の目的であるインフォーマルな関係の理論化に向け、次の2点を明らかにした。 一つは、経験や身体感覚の共有がもたらす連帯感についてである。昭和20~40年代前半において、花嫁は女講中の婚礼衣装を着て嫁入りした。婚礼衣装は女講中の加入を問わず着ることができ、嫁入道中の途中にある中宿で嫁ぎ先集落の女講中の衣装に着替えられた。同一の衣装をまとう経験と身体感覚の共有は、組織集団に依らず女性の連続体を形成することとなった。 もう一つは、非常時下の関係についてである。牡鹿半島は津波常襲地であり、東日本大震災でも大きな被害を受け、震災直後は半島ごと孤立していた。急に訪れた緊急事態への対応、そして非日常が日常化していく過程で表出する様々な社会関係から、女性による集落の再編成の側面を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査研究、発表、論文執筆等の作業については、ほぼ計画通りに実施できた。加えて、調査データを整理し、報告書としてまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は牡鹿半島(宮城県)と球磨地方(熊本県)の比較研究を予定していたが、同一地域の事例から組織集団とインフォーマルな関係を考察するほうが明確であると考え、牡鹿半島を中心とした研究に変更した。来年度は、女講中衰退以降の集落における女性同士の繋がりについてフィールドワークによる調査を進める。また、個人・共有・経験を手掛かりに、男性同士とは異なる女性のインフォーマルな関係について理論化を行う。
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Research Products
(5 results)