2014 Fiscal Year Annual Research Report
心筋梗塞に対するアンジオテンシン2ワクチンを用いた新規治療法の開発
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14J00656
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
渡邉 亮 東京医科歯科大学, 医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 心筋梗塞 / アンジオテンシンII / ワクチン療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度ではアンジオテンシン2(Ang2)ワクチンの接種がラット心筋梗塞モデルの病態を改善するか調査した。 方法として、雄のSprague DawleyラットにAng2ワクチン(Ang2合成ペプチドおよびキャリアプロテインkeyhole limpet hemocyaninの複合体)もしくは対照として生理食塩水を1~2週間の間隔で計3回接種した。これらのラットを用いて、心筋梗塞モデルを麻酔・人工呼吸下で心臓の左冠動脈前下行枝を結紮することにより作成した。モデル作成後、定期的に血圧や心機能の測定を行い、28日後に心臓を摘出し、心筋梗塞後の心機能や生存率、心筋傷害の程度、血中抗Ang2抗体価を比較した。 結果として、血中の抗Ang2抗体価は対照群では検出限界以下であったのに対し、Ang2ワクチン接種群では有意な上昇がみられた。血圧に関してはAng2ワクチン接種による影響は観察されなかった。心機能の指標である左室駆出率はAng2ワクチン接種群で有意に改善した。虚血によって誘導された心筋におけるコラーゲン沈着、非梗塞部心筋の代償性肥大、血漿BNP濃度の上昇といった反応はAng2ワクチンの接種によって軽減された。 以上のことから当該年度では、Ang2ワクチンの接種がラット心筋梗塞モデルにおいて、その病態を改善させることを示すデータを得ることができ、Ang2ワクチン療法の有用性が示唆された。この研究成果を基にして、今後も将来的な臨床応用に向けた基礎データを収集していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ang2ワクチンの接種により、実際に抗Ang2抗体の産生が確認され、第一目標であるラット心筋梗塞モデルに対するAng2ワクチン接種による治療効果を示すデータが得られてきている。また、得られた成果について「第18回日本心不全学会学術集会」において発表を行うことができた。そのため、順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、Ang2ワクチンの接種により、血清中の抗Ang2抗体価の上昇が確認され、さらにはラット心筋梗塞モデルにおける治療効果を示すデータを得ることができた。 これらの結果を踏まえて、今後は治療メカニズムや安全性、効果の持続時間の検証を新たに行っていく予定である。 治療メカニズムについては、ラット心筋梗塞モデルにおいて、心不全に関連する遺伝子やタンパク発現に対するAng2ワクチン接種の影響を調査する。さらにAng2ワクチンの接種によって産生が誘導された抗Ang2抗体が実際にAng2の作用を抑制することができるかin vitroの系で調査する。具体的には心臓繊維芽細胞の培地にAng2ワクチンを接種したラットの血清を添加し、その後Ang2で細胞を刺激したときに誘発されるシグナル伝達を抑制できるか調査する。安全性については、心筋梗塞を起こさない正常なラットにAng2ワクチンを接種し、心機能や腎機能などへの影響を調査する。また、Ang2ワクチンを接種したラットの血中抗Ang2抗体価を定期的に測定し、Ang2ワクチンの効果がどのくらい持続するかを調査する。 以上の実験を行い、将来的な臨床応用を目指して、Ang2ワクチンの基礎データを収集していく予定である。
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