2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J00665
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
額田 有美 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | コスタリカ / 先住民 / マイノリティ / ラテンアメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、コスタリカ先住民が当事者となった具体的な裁判事例や、文化鑑定(peritaje cultural)と呼ばれる司法鑑定の実施に直接ないしは間接的に関わるさまざまな人びと(先住民の当事者、当事者の親族あるいは先住民居住区に暮らす住民、文化鑑定人を務める文化人類学者、文化鑑定のユーザーである検察官・弁護士・裁判官など法律実務家)の視点や見解を民族誌的に描写することによって、コスタリカ社会のマイノリティとなっている先住民が正義(法的サービスを含む)へアクセスするということの意味や国家法と先住民の慣習法との関係を明らかにすること、そしてこれらを人類学的な視点から考察することである。 本年度は6月から12月にかけてコスタリカでの約半年間の現地調査を実施した。今回の現地調査では、前年度に行った短期滞在型の調査をとおして部分的には明らかになっていたカバグラ慣習法裁判所(Tribunal de Derecho Consuetudinario de Cabagra, TDCC)(TDCCはカバグラ先住民居住区に暮らす先住民ブリブリが主体となって居住区内で発生した係争・紛争をブリブリの慣習法にもとづいて対処する住民組織の名称である。)の成り立ちや現在のあり様、TDCCがカバグラ先住民居住区内外に及ぼす社会的文化的な影響、あるいはTDCCの拠り所ともなっている先住民ブリブリの慣習法と国家法とのダイナミックな関係性について、より全体的な理解を深めることができた。今回の調査により、より多くの貴重な民族誌的データや、裁判事例に関する豊富な資料を得られた。このことより、来年度も引き続き行う分析と考察の内容をさらに深めていくことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画どおり、約半年間の現地調査を行った。現地調査中は、カバグラ慣習法裁判所(TDCC)のあるカバグラ先住民居住区にて、住み込みのボランティアスタッフとしてTDCCの運営・活動に実際に参加することができた。このため、同地で発生している係争・紛争の内容や、それに対するTDCCの対応プロセス、TDCCの成り立ちと現状、さらには先住民ブリブリの慣習法と呼ばれるようなものがTDCC内そして日常生活の中でどのように実践されているのかについて、フィールドノート、録音データ、TDCC作成の裁判記録や資料等さまざまな形式の貴重なデータを豊富に収集することに成功した。 また、米国で開催された文化鑑定に関するワークショップにコスタリカの文化鑑定人2名と共に参加する機会を得た。ワークショップでは、ラテンアメリカ各国出身の文化鑑定人の経験をもつ研究者らと3日間にわたり議論を交わし、今後の研究協力につながる新たな人脈を築くことができた。 以上より、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度までに実施した現地調査から得た豊富なデータを全体的な視点から分析し、民族誌として記述する。 また、研究成果を広く社会へ発信するため、英語やスペイン語での発表や執筆を行う計画である。
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Research Products
(2 results)