2014 Fiscal Year Annual Research Report
脂質メタボロミクスを用いた肺疾患の新規バイオマーカー探索
Project/Area Number |
14J00728
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 貴之 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | メタボロミクス / 脂質 / 質量分析 / 超臨界流体クロマトグラフィー / 超臨界抽出 / 肺疾患 / バイオマーカー / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺がん,肺炎,喘息などの肺疾患は,難治性のものが多いため,先進国における死者数も多い.中でも,特発性肺線維症は日本の特定疾患に指定されており,有効な治療法の開発が望まれている.肺疾患の発生には,肺胞の表面張力を低下させる働きをする肺サーファクタントの成分組成の変化が関与していると考えられており,その構成成分の約90%が脂質であることから,肺サーファクタント中の脂質のプロファイリングは,肺疾患の早期診断のためのバイオマーカーの探索や疾患機序の解明に有用な手段であると考えられる.そこで本年度はまず,肺サーファクタントに含まれる脂質をプロファイリングするための分析系の構築を行った. 生体試料中の脂質分子種を分離する手段として,超臨界流体クロマトグラフィー (supercritical fluid chromatography: SFC) を採用し,カラムや溶出条件等の分離条件の検討を行った.まず,固定相のエンドキャッピングの状態等が異なるオクタデシルシリル (octadecylsilyl: ODS) カラムを用いて検討を行った結果,疎水基であるオクタデシルシリル基の根元に極性基が内包されたODSカラムを用いた場合に,脂質分子の極性基と脂肪酸側鎖両方に基づく分離が得られた.また,エンドキャッピングが施されていないカラムを用いた場合に,固定相中の残存シラノール基が脂質分子の極性基と相互作用し,極性脂質の保持が強くなることが確認された.この結果は,超臨界抽出 (supercritical extraction: SFE) をオンライン化するにあたっても好適であると考えられたため,以降は極性基内包型ODSカラムを用いて分析系の構築を進めることとした.次に,カラムオーブン温度と背圧の最適値を標準品分析で得られた理論段数を指標に決定した.以上によりSFCの分離条件を決定し,保持時間ライブラリーも整備した (投稿準備中).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超臨界抽出の条件を設定するには至らなかったが,抽出とオンライン化可能な超臨界流体クロマトグラフィー分離条件を決定することができたため,今後の分析系確立までにはさほど時間を要さないと考えられる.また,生体試料を用いなければ構築できないと考えていた保持時間ライブラリーを,標準品のみを用いて構築することに成功し,生体試料から検出されない分子種も含めてデータベース化できたため,今後の生体試料分析でこれまでに報告のない分子種の発見および疾患進行時における代謝プロファイルの変動をとらえることができると期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに最適化した超臨界流体クロマトグラフィーの分離条件に基づき,超臨界抽出条件を決定する.その後,構築したオンライン超臨界抽出超臨界流体クロマトグラフィー質量分析メソッドを用いてブレオマイシン誘発肺線維症モデルラットの気管支肺胞洗浄液および血しょうを対象とした脂質メタボローム解析を実施する.
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Research Products
(6 results)