2014 Fiscal Year Annual Research Report
多品種多世代の製品ライフサイクルの統合設計支援手法の提案
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14J00742
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松山 祐樹 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ライフサイクル設計 / 資源循環 / resource efficiency / ライフサイクルシミュレーション / computer aided design |
Outline of Annual Research Achievements |
深刻化する環境問題に対し,多品種多世代の製品群を,その製造から使用・回収・廃棄に至るまでのライフサイクル全体と併せて設計することで,資源を効果的に循環させる製品ライフサイクルを構築することが製造業者にとっての重要な課題である.本研究は,この多品種多世代の製品ライフサイクルの統合設計手法とその計算機支援ツールの開発を目的とする.この目的を達成するため,平成26年度は以下5つの内容に取り組んだ. 第一に,多品種多世代の製品群とそれらライフサイクルの設計情報を統合的に操作可能とする設計対象モデルを提案した.本モデルは,各製品を階層的に表現した製品モデルと,時間変化する処理のネットワークを表現したライフサイクルモデル,および2つのモデル間の対応関係から成る. 第二に,ライフサイクルにわたる製品個体は異なる状態を示し,またその量が変動する.こういった処理する個体の多様さは,資源が効果的に循環するかに影響する重要な要因であるため,これを設計段階で表現可能としたモデルとして,個体情報モデルを提案した. 第三に,個体情報モデルを容易に作成可能とするため,製品モデルとライフサイクルモデルの対応関係を用いたシミュレーションモデルへの変換手法を提案した.本シミュレーションモデルの実行結果をアーカイブ化することで,個体情報モデルを作成する方法を示した. 第四に,以上の手法に基づくモデリング支援ツールを開発した.第五に,開発したツールを用い,スマートフォンを対象とした実行例を実施した. その結果,回収される製品個体の量の時間推移と状態の違いを表現できた.この表現を用いることで,二世代製品間で資源を循環させるうえでの問題が把握できた.また,従来のスマートフォンでは適用されていない部品リユースの実現可能性とその効果が評価可能であった.つまり提案手法は,より効果的な資源循環をモデリングするうえで有効な手段と言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資源を効果的に循環させる製品ライフサイクルを構築するためには,多品種多世代の製品とそれらライフサイクルの設計に関わる情報を操作可能とした設計対象モデルが必要不可欠である.これは,従来の製品設計における設計対象モデルが,設計者が設計に関わる情報を作成や意思伝達するために必要不可欠であることと同様の理由である.また,製品個体ごとに状態が異なり,量が変動することを把握することの重要性は,これまでの研究で指摘されてきた.この2点から,本研究では現在までに,多品種多世代の製品ライフサイクルの設計対象モデルと,そのライフサイクルにわたって製品個体が示す状態の違いや量の変動を表現する手法を提案し,またそのモデリングを支援するツールの開発に着手した.本モデリング手法の有効性は,二種類の製品を対象とした実行例を通じて検証できた. 多品種多世代の製品ライフサイクルの統合設計支援手法の開発という研究目的を達成するためには,「12.今後の研究の推進方策」に記載する課題の解決が必要である.しかしこれらの課題は,残り1年で十分に解決可能である.そのため,目的達成に向けた現在までの研究進捗は,おおむね順調であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で,二種類の製品を対象に提案手法の有効性を検証した.今後は,異なる製品特性をもつ複数種類の製品を対象に,提案手法の有効性と汎用性についての検証と考察を深める.それと伴に,製品の劣化データや環境負荷・コストデータなどを収集してデータベースを構築し,モデリング支援ツールの有用性を高める. また,製品ライフサイクルには,空間的にも時間的にも不確実な情報が内包される.空間的には,ユーザの使用状況や修理業者によるメンテナンス技術レベルなど,設計者にとって制御できない情報が含まれる.時間的には,技術進展のような市場変化によって,部品が陳腐化してリユースされ得ないといった将来的な動向が不明確な情報が含まれる.これらの問題に対処した設計を行うために,不確実性下においても設計目標を達成するような設計情報の探索手法が必要である.設計者にとって制御不可な情報に対して制御可能な情報を決定する手法としては,従来の製品設計で適用されている実験計画法がある.そこで今後は,実験計画法に基づき,不確実性下における製品ライフサイクルの設計情報の探索支援手法の構築に取り組む.
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Research Products
(6 results)