2014 Fiscal Year Annual Research Report
潤滑メカニズム解明のための潤滑剤の界面分子構造のその場観察・分析法に関する研究
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14J00744
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
渡部 誠也 東京理科大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | SFG分光分析 / その場観察 / トライボロジー / 摩擦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「バルクおよび界面における分子のその場観察手法の確立、およびバルク・界面における分子挙動の総合的解釈によるイオン液体等の潤滑メカニズムの解明」である。本年度はそのファーストステップとして界面分子のその場観察手法観察に従事した。具体的には、摩擦試験中に摩擦面における分子のその場観察を目的に、プリズムオンディスク型の摩擦試験機構を組み込んだSFG分光分析装置の開発を行った。本試験機では、摩擦試験中に可視光、赤外光ならびにSFG光の光路がずれないような高精度の面安定性が要求されるが、組み上がった試験機では十分な精度が確保されていた。 研究実施計画では測定対象としてイオン液体を用いるとしていたが、本年度はまず装置の信頼性・有用性を確認するために、トライボロジー分野において油性剤として低摩擦を発現する最も一般的かつ典型的な添加剤であるオレイン酸の分子吸着膜を測定対象とした。具体的には、無水石英プリズム表面とオレイン酸を添加したPAOとの界面を対象に摺動状態のSFGその場観察を行った。ディスクを回転させていない静的状態とディスクを回転させた動的状態におけるそれぞれのSFGスペクトルを取得した結果、静的状態では、CH2、CH3の非対称伸縮振動モードに対応する~2920cm-1と~2956cm-1に二つのピークが確認された。一方動的状態では、静的状態で観測された二つのピークに加えて、CH2の対称伸縮振動モードに対応する~2836cm-1にピークが観測された。なお、動的状態のSFGスペクトルは、SFG光学系の入射面に対して平行に摺動させたものである。このように、吸着したオレイン酸分子は、せん断力が加わることでその配向状態を変化させることが示された。この結果は、摩擦界面における吸着分子の挙動を世界で初めて直接観察した事例である。界面分子の配向状態など、詳細な分子状態については、動的なSFGスペクトルの摺動方向依存性を調べる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として、本研究課題の最も困難かつ重要なポイントである『SFG分光分析を用いた摩擦面のその場観察』を可能とした。その場観察のための装置開発には、当初多くの解決すべき困難が予想されていたが、本年度中にそれらに適宜対処し、装置の開発ならび開発した装置を用いての測定を行えたことから、当初研究目的の達成度は十分なものであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、イオン液体を測定対象に用いると記載したが、本年度は試験機の信頼性・有用性確認のため、オレイン酸の分子吸着膜を測定対象とした。SFG分光分析では分子配向の情報まで得ることができるが、そのためにはSFGスペクトルの摺動方向依存性を確認する必要がある。そのため、今後も引き続きオレイン酸の分子吸着膜を測定対象とし、SFGスペクトルの摺動方向依存性についてデータを取得し分子配向解析を行い、試験機の信頼性・有用性の確認とともに解析・評価手法について確立を試みる。その後に、得られた解析・評価手法に基づいてイオン液体の測定を行う予定である。
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Research Products
(11 results)