2014 Fiscal Year Annual Research Report
PYPタグと長波長発蛍光プローブを用いた蛋白質マルチカラーイメージング技術の開発
Project/Area Number |
14J00755
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平山 真也 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | タグ蛋白質 / PYPタグ / 発蛍光プローブ / GLUT4 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛋白質の蛍光イメージングは、生体内蛋白質の局在や挙動を直接可視化できる極めて有力な技術の一つである。我々のグループにおいても、Photoactive Yellow Protein (PYP)タグをタグ蛋白質とした蛍光イメージング技術を開発している。特に、標的蛋白質と結合したときにのみ、異なる色の蛍光を発する発蛍光プローブを開発し、蛋白質の無洗浄マルチカラーイメージングを達成している。 本研究では、開発した発蛍光PYP標識技術を、グルコーストランスポーター4(GLUT4)の膜輸送イメージングへ応用する。これまでのGLUT4動態の解析には、蛍光蛋白質や抗体が広く用いられてきた。しかし、これらの手法は標識の制御や様々な部位に局在するGLUT4を区別することができず、トラフィック経路の直接な解析が困難であった。申請者は、PYP標識技術と細胞膜非透過性の発蛍光プローブを用いることで、膜移行したGLUT4のみを選択的にイメージングする技術を開発し、GLUT4動態解明の基盤技術の構築を目指す。 本年度、PYP-GLUT4をコードするDNAの構築や、融合蛋白質の発現条件の検討を行った。その結果、HeLa細胞でのPYP-GLUT4の発現を確認でき、インスリン添加によって細胞内から細胞膜へと移行することも観察できた。さらに、PYP-GLUT4発現HeLa細胞に、新たに開発した高い蛍光OFF/ON比を有する発蛍光プローブを添加することで、インスリン刺激により膜移行したPYP-GLUT4のみを選択的にイメージングすることに成功した。 現在では、多色の発蛍光プローブを組み合わせたGLUT4のマルチカラーイメージングに取り組んでいる。このようなGLUT4のマルチカラーイメージング及びトラフィック経路の解析は、生活習慣病として知られる二型糖尿病の解明につながることが期待され、その社会的な意義は非常に大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、初めに脂肪細胞や筋肉細胞を用いたアッセイ条件の検討を試みた。これらの細胞がインスリン応答性を示すためには分化させる必要があるため、まず、それぞれの細胞の分化条件を検討した。その結果、分化した脂肪細胞にのみ見られる脂肪滴、筋肉細胞の多核化を観察することができ、最適な分化条件を見ることができた。次に、それぞれの細胞に構築したPYP-GLUT4が高発現するトランスフェクション条件の検討を行った。様々なトランスフェクション条件を検討したけれども、これらの細胞では、PYP-GLUT4がうまく発現しないことが示された。そこで、HeLa細胞やCHO-K1細胞でGLUT4がインスリンに応答して細胞膜移行することが報告されていたため、これらの細胞を用いてPYP-GLUT4のトランスフェクション条件を検討した。結果として、PYP-GLUT4の発現をウエスタンブロットにより確認できた。次に、PYP-GLUT4発現HeLa細胞に細胞膜非透過性の発蛍光プローブ(Cy5DNB2)を添加し、インスリン添加前後でのイメージングを行った。その結果、洗浄操作により、遊離プローブを取り除くことで、細胞膜に移行してきたPYP-GLUT4のみをCy5DNB2で標識することに成功した。一方で、無洗浄では有意な差が見られなかった。この原因として、Cy5DNB2の蛍光OFF/ON比が低いことが問題と考え、より高い蛍光OFF/ON比を有する発蛍光プローブを開発した。新規発蛍光プローブは、大きな蛍光OFF/ON比を有することが示されたため、本プローブを用いることで、GLUT4のリアルタイムイメージングを試みた。その結果、膜移行したPYP-GLUT4のみを選択的にイメージングすることにも成功した。以上より、研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは一つの発蛍光プローブを用いることで、GLUT4のイメージングを行っていた。これにより、目標の一つであった膜移行したGLUT4の選択的なイメージングに成功した。今後の研究の推進方策としては、これまでに開発した様々な発蛍光プローブを用いることにより、多色の蛍光を組み合わせたマルチカラーイメージングで、GLUT4の細胞内動態をより詳細に解析する。特に、GLUT4の57番目のアスパラギンに修飾される糖鎖に注目している。今日、糖鎖の有無によってGLUT4動態が変化するかどうかが議論されている。α-マンノシダーゼIの阻害剤であるキフネンシンをGLUT4発現細胞に添加すると、糖鎖修飾が阻害される。そこで、キフネンシンで処理したGLUT4発現細胞と通常のGLUT4発現細胞を用いたイメージング結果を比較し、細胞内外のプローブ蛍光の挙動を観察する。さらに、キフネンシン処理前にGLUT4を一つ目の蛍光プローブで標識し、キフネンシンを添加後、二つ目の蛍光プローブで標識するパルスチェイスイメージングを行う。これにより、一定期間内に発現したGLUT4のみの動態を二つ目の蛍光プローブで追跡することが可能となる。今後は、阻害剤アッセイ条件の最適化を行い、糖鎖修飾が阻害されたかどうかをウエスタンブロット等により観察する。さらに、上記で示したイメージング条件の最適化を行うことで、GLUT4動態の解析に一石を投じることができる成果が得られると考えている。
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Research Products
(3 results)