2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J00772
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森本 裕 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | Network / Airport competition |
Outline of Annual Research Achievements |
空港間のハブの地位をめぐる競争と航空会社のネットワーク選択を同時に考慮できるモデルを開発し、小都市にハブ空港が立地するメカニズムを明らかにした。結果の詳細は、以下のとおりである。 ハブの立地については次の通り。大都市に立地している空港は、ハブ空港になっても新たに獲得できる需要は小さい。よって利用料の値下げには消極的である。小都市の空港は自都市からの需要が小さいため、大都市からの乗継需要を獲得することで総旅客数を劇的に増加させることが可能である。よって、ハブになるために大幅な値下げを試みるインセンティブがある。 空港間競争と航空ネットワークについては以下の通り。空港間の距離が遠いときや、固定費が小さいときはPoint-to-Pointが、距離が近く固定費が高いほどHub-Spokeが選ばれやすいことが明らかになった。これは、空港間の距離が近いときは路線をハブに集約するコストが低いため、固定費が大きいときは路線を集約した時の費用削減効果が大きいためである。また、小都市の空港がハブになりうることが明らかになった。これは、小都市の空港の大幅な利用料の割引戦略によるものである。 社会最適なネットワークと政策への示唆については、以下の通り。社会厚生上、小都市の空港がハブになることは望ましくない。なぜなら、このとき大都市の空港をハブにすることで乗継便の運航コストと乗客の乗り継ぎに関する時間費用を削減することができるからである。したがって、空港の経営を統合したり、過剰な利用料の割引を禁止したりすることによって、規模が大きい都市にハブを立地させる政策が社会的に望ましい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、小都市の空港がハブになるメカニズムを明らかにすることができた。この結果を用いて、東アジア地域では韓国の仁川国際空港が低料金を武器にハブの地位を固めている理由を説明することができる。他方、成田国際空港が利用料を高く設定し、結果として国際線の利用客数が仁川よりも少ないのは、値引きすることで却って利潤が減少するからであると考えられる。 社会厚生の観点からは、小都市にハブが立地することが望ましくないから、大都市の空港をハブにする政策を提示する必要がある。この点はまだ明らかになっていないから、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
大都市の空港に需要を集約することで、社会全体としての乗り継ぎコストを減少させる政策を提案することが今後の課題である。空港間の競争が非効率を生み出しているから、何らかの方法で競争を規制する必要がある。 空港利用料の上下限の設定、空港経営の統合、航空会社のネットワークへの規制など、多様な手法が考えられるが、どれが最も望ましいかを明らかにしたい。
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