2014 Fiscal Year Annual Research Report
温和な条件で達成されるフェニルラジカル発生法の開発と有機合成反応への応用
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14J00792
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古川 嵩幸 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ニッケル触媒 / 炭素―水素結合活性化 / ホウ素化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度私は、ニッケル触媒を用いた芳香族炭素―水素結合の直接ホウ素化反応の開発に取り組んだ。特別研究員の研究課題に取り組む中で、研究課題とは異なるものの、ニッケル触媒が炭素―水素結合のホウ素化反応に活性を持つことを見出した。これは研究課題と同等及びそれ以上に新規性とインパクトの大きな発見であると考え、その追求を行った。炭素―水素結合のホウ素化反応は、多段階の反応や余分な廃棄物を副生せずに、直接的に合成化学的に非常に有用なホウ素官能基を導入できることから、非常に実用的な反応として、合成化学や材料化学などの広い分野で基礎から応用まで精力的に研究が行われている。本分野において、最も効果的な触媒としては貴金属のイリジウム触媒が知られている。近年になってイリジウムに代わる卑金属触媒の利用が進められており、鉄、コバルト錯体の触媒活性が報告されている。しかしこれらの触媒系は再酸化剤や光化学条件の必要性や基質適用範囲等にいまだ改善の余地が残されている。研究課題遂行中に見出したニッケル触媒の利用は、これらに代わる新たな卑金属触媒としてニッケルを提案できると考えその追求を行った。種々の条件検討を行った結果、触媒量のニッケル存在下、N-ヘテロサイクリックカルベンのICy配位子を用いることで、ベンゼンの炭素―水素結合の直接ホウ素化が効率よく進行することを見出した。本研究では単純なベンゼンの炭素―水素結合の官能基化をニッケル触媒で達成した非常に珍しい例といえる。さらに本触媒系はインドール誘導体に対して特に高い活性を持つことを見出し、グラムスケールで2位がホウ素化されたインドールの合成を達成し、実際的な合成有用性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度行ったニッケル触媒を用いた芳香族炭素―水素結合の直接ホウ素化反応の開発は、当初計画していた研究課題とは異なった種類の反応開発であるが、その新規性とインパクトは大きく、研究課題同等、それ以上に重要な研究であると言える。研究の進行状況も良好であり、当初の計画とはことなるものの、違った方向性で十分な進展があったものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度見出したニッケル触媒を用いたホウ素化反応は、従来の研究計画とはことなるものの、研究課題の解決と同等、それ以上に重要な研究成果であったと考えている。また、今年度の研究により、ニッケル触媒を用いたホウ素化反応の分野においてさらに興味深い研究課題も見つかっており、来年度もこちらの研究を主体として進めていく計画を立てている。当初設定した研究課題と違いはあるものの、十分に問題解決に向けて取り組む意義のある課題であると考えている。
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Research Products
(3 results)