2014 Fiscal Year Annual Research Report
スクリューボール・コメディ研究-ジャンルの特質と映画史的意義-
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14J00841
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
有森 由紀子 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ映画 / スクリューボール・コメディ / プレストン・スタージェス / 映画ジャンル論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、スクリューボール・コメディを代表する監督/脚本家プレストン・スタージェスの作家論的研究を中心に行い、その成果を論文「『レディ・イヴ』における恋愛バトルの特異性 - 無垢なアダムと堕ちたイヴの闘い -」としてまとめた(現在、審査中)。本論文では、スタージェスの代表作『レディ・イヴ』(The Lady Eve, 1941)を中心に考察し、本作がジャンルの基本的形式に従った男女間の恋愛バトルを描きながらも、それをいかに変形させ、独自性を示しているのかを明らかにした。特に注目したのは、「無垢なアダム」としてのヒーロー像と、「堕ちたイヴ」としてのヒロイン像であり、両者の造形においてはそれぞれを演ずる俳優のスター・ペルソナに対する自己言及性が顕著に見られる。また、両者の間で繰り広げられる恋愛バトルには反復構造が伴い、ヒロインのアイデンティティの分裂・増殖をもたらしている。本作が示すこのような恋愛バトルの特異性を明らかにするとともに、1940年代にジャンルが衰退していく中で、それがより極端な形で他のスタージェス作品に引き継がれていく様態を解明した。またスタージェス作品にとどまらず、他の監督のスクリューボール・コメディや、他ジャンル(メロドラマ映画、西部劇映画、フィルム・ノワール)の作品についても幅広く比較検討し、本作の自己言及的性質と映画史的意義を明らかにした。 なお、本論文の作成にあたり、国立民族学博物館および東京国立近代美術館フィルムセンターにおいて、所蔵されている映画関連資料の調査を行った。また、UCLA Film & Television Archiveを訪問し、所蔵されている映画作品の調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外における資料調査によって、今後の研究遂行のための基盤を確立することができたこと、および研究成果を論文にまとめたことで、一定の成果をあげることができたと考えている。特に、1930年代から40年代のスクリューボール・コメディを中心に、これまでスクリューボール・コメディ論ではほとんど取り上げられることのない作品にも多数ふれ、詳細なデータベースを構築できたことは、今後の研究を発展させる上で有益であった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きスタージェスの作家論的研究を行うと共に、スタージェス作品やスクリューボール・コメディというジャンルの枠を超えたより幅広い作品を対象とした考察を行う。具体的には、スタージェス作品と、彼に強い影響を与えたフランク・キャプラ監督による人民喜劇との比較検討を行い、スクリューボール・コメディと人民喜劇の関係性の再評価を行う。スタージェス作品には、人民喜劇への言及やパロディが顕著に見られるからである。映画テクストの分析にもとづき、同時代のアメリカ社会との関わりについても考察しながら、スタージェス作品の独自性と、キャプラ作品がスクリューボール・コメディに与えた影響を明らかにする。また、1930年代から40年代の作品で、これまでのスクリューボール・コメディ論ではほとんど取り上げられることのなかった作品、および当ジャンルの枠組みで論じられることの稀な近年(80年代以降)の作品についての再評価も行う。
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Research Products
(1 results)