2015 Fiscal Year Annual Research Report
単純な脊索動物ワカレオタマボヤにおける細胞挙動の追跡から器官形成の全容を探る
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14J00861
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岸 香苗 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ワカレオタマボヤ / 表皮 / ライブイメージング / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊索動物門尾索動物亜門に属するワカレオタマボヤ(Oikopleura dioica)は、早い発生スピードと少ない細胞数から、これまで知られる中でもっとも単純な脊索動物であると言われている。この生物を使えば、未受精卵から成体までの全ての細胞を追跡できるのではないかと考え、特に、知見の乏しい孵化後の発生に関して、細胞挙動の記載を行っている。今年度は、昨年度に引き続き、表皮細胞に着目して器官形成過程の観察を行った。 ワカレオタマボヤの体幹部の表皮は、左右対称で個体差のない、複雑なパターンを持っており、領域ごとに細胞や核の大きさ、遺伝子発現などが異なっていることが知られている。ハウスと呼ばれる摂餌フィルターを分泌するためにこの複雑なパターンが必須であり、生存のためにもパターニングは非常に重要であると考えられる。このパターンは、孵化直後の幼生では特に観察されないが、その後5時間ほどの間に急激にできあがってくることがこれまでの観察でわかっていた。その過程で個々の細胞がどのような挙動を取るのか、ライブイメージングを用いて分裂方向やそのタイミングの観察を行った。結果、いくつかの領域において興味深い現象がみられている。 たとえば、背側の正中線上には、孵化直後からはっきりとした細胞列が1列存在し、それは成体まで維持される。これら正中線上の細胞は、個体に依らない一定の細胞系譜を示す。また、少なくともこの正中線の周囲の細胞は、正中線を境に左右対称な分裂方向とタイミングを示す。また、可変色蛍光タンパク質Kaedeを用いて、2細胞期(それぞれの割球の子孫細胞は、主に体の左右どちらかを形成する)に細胞をラベルすることによって、細胞の系譜解析を行った。その結果、表皮細胞では、それらの割球の子孫細胞の境界と、実際の体の左右境界が一致しないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ライブイメージング法を用いて、これまで未知の部分が多かったワカレオタマボヤ表皮の形態形成過程について、多くの知見を得られた。昨年度までに加え、主に系譜の左右非対称性に関する部分が大きく進展し、論文執筆に向け準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、これまでとりためた多くの未解析のデータを解析することで、細胞分裂方向やそのタイミング、回数などがどのくらい決まっているか(個体差の有無)を解析して行く予定である。また、現在空白期間となっている孵化直前及び直後の形態形成過程について、ライブイメージング法と、可変色蛍光タンパク質Kaedeを併用して解析予定である。この解析がうまくいけば、すでに記載が行われた「孵化前」と、孵化後~成体の形態形成を関連付けることが可能となると考えている。これらの解析を進めるとともに、学術論文として研究成果を発表する準備をする予定である。
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Research Products
(11 results)