2014 Fiscal Year Annual Research Report
ジャズ史再考:第二次世界大戦後のアメリカ合衆国におけるファンの活動を中心に
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14J00868
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山田 優理 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
莫大な数のジャズに関する資料を保管している研究機関であるThe Institute of Jazz Studies(NJ州)にてファンレターの収集を行った。とりわけ、ジャズ・ミュージシャンMary Lou Williams (1910-81) 宛に書かれたファンレターの収集を行ったが、その数は数千に及んだ。それらを一枚一枚読むことで当時のファン達が彼女に演奏家、女性、またアフリカ系アメリカ人として如何なることを期待していたのかが次第に明らかになった。加えて、同研究施設にてDown BeatとMetronomeというジャズ雑誌の読者投書欄を閲覧した。そこから見えてくるのは、演奏家の評価やジャズ史観において批評家たちとは異なる見解を示す熱心な音楽ファンの姿である。読書投書欄がファンという社会集団が彼・彼女らの「声」を発する/残すという意味で重要な役割を担っていたことが分かる。全ての投書欄に目を通すことは出来なかったので、今後は引き続き同様の調査を行う次第。 さらに本研究は、当時の音楽をめぐる文化的・社会的状況を伝える史料として音楽ファン達の記憶を用いている。今回のニューヨーク滞在中に音楽ファンに掘り下げた聞き取り調査を行うことが出来た。とりわけ興味深かったのは、ニューヨーク滞在中に、アフリカ系アメリカ人に対する警察の暴力および大量の投獄に対する新たな抗議活動・社会運動が全米規模で台頭してきたことである。このことから、実際に公民権運動などの社会運動を経験した音楽ファンから当時の音楽実践と政治的状況の記憶や関係性、そこから見えてくる現在の社会運動における音楽の役割等について多くの知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ファンレターと雑誌の読者投書欄の調査に関しては順調に進んでいる。ただ、その数が膨大である為に、全てに目を通すのに当初予定していたよりも時間がかかった。聞き取り調査に関してもニューヨークに数ヶ月滞在したことで、調査対象者の方々と良好な関係を築くことが出来、週末などを利用して長時間に渡る調査を行うことが出来た。また調査で得られた知見はAmerican Studies Association Annual Meeting (ロサンゼルス、2014年11月) やHeidelberg Center for American Studies Spring Academy 2015 (ハイデルベルク、2015年3月) といった学会で発表し、一定の評価と有益な助言を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今までの調査を引き続き実行すると共に、National Museum of American History (ワシントンD.C.) に赴き、デューク・エリントン (1899-1974) 宛に書かれたファンレターの分析も行う予定である。この調査によって得られた成果は、これまでの研究により蓄積された見識と照合し、共通点や相違点を明確にすることでより多角的な研究結果となって還元される。また調査を進めるなかで得られた知見は、National Council for Black Studies (シャーロット、2016年3月) などの国際学会で発表する予定でいる。
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Research Products
(2 results)