2014 Fiscal Year Annual Research Report
単一粒子ナノ加工法を用いた全フラーレン薄膜太陽電池の開発
Project/Area Number |
14J00873
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三木江 翼 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 全フラーレン薄膜太陽電池 / フラーレン誘導体 / 過渡吸収測定 / 時間分解マイクロ波電導度測定法 |
Outline of Annual Research Achievements |
p型半導体としてペンタアリール5重付加フラーレンを応用し、p/n双方にフラーレン誘導体を用いた有機薄膜太陽電池(OPV)素子性能の評価を行った結果、変換効率(PCE)は低いものの(0.0071%)、全フラーレンOPVのコンセプトを実証した。変換効率が低い原因を調べるため、時間分解マイクロ波伝導度(TRMC)法による電荷分離・輸送特性評価と過渡吸収分光測定による電荷種の同定を行ったところ、系中の大部分で励起移動を生じているという結果が得られた。この結果は、均一に混ざっている活性層の制御とエネルギー準位のチューニングによって、電荷分離をいかに促進できるかが、PCE向上の鍵となることを示している。そこで、高エネルギーイオンビーム照射によってp型フラーレンを共有結合でつなぎ合わせ、1次元ナノワイヤーを形成させた。さらに、このフラーレンナノワイヤーを効率的に電子を流す電線の芯としてOPVに応用し、熱安定の高いフラーレンナノワイヤー含有・全フラーレン太陽電池の開発へ展開した。単一粒子ナノ加工法(SPNT)は様々なフラーレン誘導体に普遍的に適用できることが以前報告されており、本研究で用いた嵩高い置換基を有するアリール5重付加体フラーレンにもSPNTを適用可能であることを確認した。次いで、形成させたp型フラーレンナノワイヤーの上にn型フラーレン誘導体であるPCBMを塗布し、OPV素子性能評価を行ったところ、極めて低い短絡電流密度(Jsc)によってPCEは依然低いものの、開放電圧(Voc)とフィルファクタ(FF)はそれぞれ、0.55 Vと0.37という固定化していない素子に比べて顕著な改善がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
単一粒子ナノ加工法を用いた全フラーレン薄膜太陽電池の開発は、期待通り研究が進行している。p型半導体として用いたペンタアリール5重付加フラーレンに対して単一粒子ナノ加工法(SPNT)を適用したところ、非常に効率的にナノワイヤーを形成することを確認した。さらに、ナノワイヤー上にn型半導体としてPCBMを塗布しデバイスへ適用した結果、未だPCEは低いものの(6×10-6 %)p/n型半導体のエネルギー差に対応する高い開放電圧(0.55 V)とダイオード特性が得られた。有機的手法によりエネルギー準位を調節したp型フラーレンのナノワイヤーからn型フラーレンへ電荷分離が生じるという知見は、現在論文としてまとめている段階にあり研究計画は順調に推移していると言える。 さらなる変換効率向上へ向けた設計戦略についても施実施段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
現在用いているアリール5重付加フラーレンは、HOMO準位が深くn型として用いるPCBMとのHOMOの差が小さいため、効率的な電荷分離が阻害されている。そこで、いくつかのフラーレン多付加体を用いてHOMO準位のスクリーニングを行い、十分なエネルギー差を有する組み合わせを見つける。さらに、今後、下地に色素相、上部にP型フラーレンからなる階層ナノワイヤーを形成させ、光吸収特性、ひいてはJscの向上を試みる。まずは、様々な色素を用いてスクリーニングを行う。ナノワイヤーの形成が確認されれば、同様にデバイス作成・評価を行う予定である。
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Research Products
(9 results)