2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J00898
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳楽 有里 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / アフリカ系アメリカ人女性文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アメリカ黒人女性作家Gloria Naylorの作品を研究し、人種と性の双方にかかわる差別について考察することである。現在までのネイラー作品を、それらに描かれる差別に従って相互に比較する。平成26年度の研究の成果は、二度の学会発表と一本の論文で発表している。博士論文の第二章に当たるLinden Hillsについての考察をイギリスで開催された国際学会で発表(2015年7月)し、その後第三章に当たるMama Dayの考察をアメリカ文学会全国大会(2015年10月)で発表を行った。また、イギリスでの学会発表の内容を加筆・修正した論文が黒人研究会の雑誌「黒人研究」に掲載された。
Linden Hillsについての考察:ネイラーの第二作目の長編小説Linden Hillsにおける白いイメージに着眼点をおき、アメリカゴシック小説における白さと比較することで、ネイラーがいかに伝統的な色彩のイメージを脱却しようとしているかを論じたものである。先行研究では、自宅に幽閉されるウィラ・ネディードに注目し、ゴッシック小説を模倣したことによってキャノン作家たちのイデオロギーに対抗していると論じている。本論文では、ゴシック小説の要素を取り入れつつ「白」に負のイメージを与えたことにより本作品に厚みを与えることになったが、そのネイラーの手法を一つずつ探っていき、作品にいかに作用しているかを考察した。
Mama Dayについての考察:本論文で取り上げるMama Dayはネイラーの第三作目の長編小説である。特にネイラー自身も負うところが大きいと述べている黒人女性作家の先駆者的存在であるZora Neale Hurstonとの関わりからMama Dayを考察した。ハーストンからネイラーに受け継がれた文学におけるconjure woman(Marie Laveau)像の受容と変容を考察し、それらの議論を踏まえ、Mama Dayが女魔術師をめぐる論争に対する批判を含んだ作品であることを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度より取り組んでいた第二章Linden Hillsについての考察がイギリスでの学会発表とその後の学会誌への掲載という形で発表されたことにより完結した。
平成26年度の目標である第三作Mama Dayについての考察は口頭発表を終えおり、引き続きこの内容に加筆・修正を行っている段階である。
平成26年7月にヴードゥー教の資料収集のためアメリカへ渡る予定であったが、これについては若干予定を変更した。平成27年1月からアメリカのハーバード大学でVisiting Fellowとして留学することになり、現在当大学で資料収集を行っている。資料が足りない場合、平成27年6月にニューオリンズへ行く可能性があるがこれについては現段階では検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、第三作Mama Dayについての口頭発表の内容に加筆・修正を加えた原稿を学会誌に投稿する予定である。さらに、予定通りグロリア・ネイラーの第四作Bailey’s Cafeについてを、これまでの研究成果とつきあわせながら綿密に研究する。平成27年度中に、これまでの研究成果を海外に発信するためアメリカで学会発表を行う予定である。
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Research Products
(3 results)