2014 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム戦争後のアメリカ海兵隊の戦略構想の変容と介入政策への影響
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14J00947
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
阿部 亮子 同志社大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ / 機動戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究課題は、ベトナム戦争後の米国海兵隊の作戦、戦術構想の形成過程、組織への採用過程、実戦への反映について考察することである。博士後期課程二年目に当たる本年度は、4月~8月の前半部分で、構想の形成過程に関する資料、二次文献の読み込みと学術論文への仕上げを行うと共に、構想の採用過程の前半部分に関する資料の読み込みと論文執筆を実施した。9月~3月の後半部分では、組織への採用過程に関する資料収集と聞き取り調査に向けた下準備と、2月22日~3月27日にアメリカ海兵隊アーカイブ特別収集部局で資料収集と聞き取り調査を実施した。 構想の形成過程に関しては、1989年に海兵隊が採用した機動戦構想とは、敵の機能不全を促す戦争様式であること、具体化しない抽象的な構想であること、戦略、作戦、戦術という階層区分を採用したという特徴があり、機動戦構想には、構想の形成を主導したと考えられる3人の将校達の思想が反映されていると考えられることを明らかにした。彼らは構想を形成する際に、従来政治科学者が論じてきたように、戦略環境の変化から新しい構想を形成したのではなく、戦場での経験から導き出した教訓を軍事史研究で確認することで、形成したのであると論じた。 採用過程に関しては、1970年代後半に海兵隊が直面していた課題が機動戦構想を受け入れる土壌となったのではないかという仮説を資料を読み込むことで確かめた。当該期に海兵隊はNATO北方正面での上陸戦と陸上戦という新たな性質の訓練に参加するようになる。本研究では、海兵隊将校達によって書かれた記事そして訓練報告書という一次資料を読み込むことで、訓練の内容と直面していた課題を明らかにした。現在、その課題と機動戦構想構想の類似点を考察し、執筆中である。採用過程に関して不足していた資料を2月から3月に収集したため、今後その資料の読み込みを進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画書で記載したように、構想の特徴とその背景について執筆し、また構想の採用背景に関する二次資料と一次資料の読み込みを進めた。加えて、研究計画書の通り、採用過程に関して不足していた資料を2月~3月にかけて米国にあるアーカイブで収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2月~3月にかけてアーカイブで収集してきた採用過程に関する資料を読み込み、構想の採用過程に関して論文に仕上げていく。採用過程の考察では、政治科学者のステファン・ピーター・ローゼンが著書Winning the Next Warで提示した軍隊の変容モデルをゆるく適用しながら機動戦構想の採用過程を考察する。ローゼンによれば、平時の軍隊の改革とは、戦略環境の変化を認識した将校たちの働きかけにより推進される。1970年代後半、アメリカの国防政策が欧州重視へと回帰していくと、海兵隊は従来主戦場とみなしてこなかった欧州に活躍の場を求めるようになる。本研究では、機動戦構想は、NATO北方正面という新たな場所における任務で海兵隊が直面していた課題とどのように関連していたのかについて考察し、論文に仕上げる。現時点では、NATO北方正面での訓練において、海兵隊は作戦テンポを高速化させる必要性と機械化部隊運用を確立する必要性に直面し、それらの課題が機動戦構想を受容する土壌となったのではないかと論じる予定である。さらに、戦略環境の変化による新たな任務で直面していた課題について考察を深めるため、1970年代後半以降Twentynine Palms演習場にて開始した機械化部隊実験で直面した課題を解明し、それと機動戦構想の関連について考察する。
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Research Products
(1 results)