2014 Fiscal Year Annual Research Report
社会階級・階層と高等教育の不平等に関する国際比較研究:制度的アプローチによる検討
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14J00952
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白川 俊之 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 社会階層・移動 / 教育不平等 / 教育システム / マルチレベル分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
教育機会の不平等、とくに高等教育の機会についての歴史的な変化を明らかにするために、全国の男女からランダムサンプリングされた社会調査のデータにもとづき、出生コーホート、出身階層、教育キャリアを基本変数にもつデータ・セットを整備した。基本データを整備する過程では複数の社会調査から同一変数を抽出し、それらを合併したファイルを作成した。使用したデータは1985年から2007年までの社会階層と移動全国調査(SSM調査)のデータ(2007年は若年を対象とした郵送調査)、ならびに2002年と2009年の日本版総合的社会調査(JGSS)のデータである。
高等教育の不平等の趨勢を、中等教育の不平等と比較しつつ、マクロな社会的要因と関係させながら検討するために、マクロな進学コンテクスト(コーホート×地域)に対応させた時代・地域レベルの変数の整備をおこなった。時代・地域レベルの変数の作成には国勢調査の結果を利用した。このようにして作られたマクロ・データと個票レベルの個人データとを結合し、中等教育(高校進学)と高等教育(大学進学)の不平等がマクロな社会的要因の変化とどのように相関しているのかを、統計モデルを利用して検討した。分析の結果、進学コンテクストにおける産業化のレベルがすすむにつれ教育不平等の要因構造が父職業優勢から親学歴優勢へと変わること、そのような変化には進学段階ごとのちがいがほとんど見られないこと、したがって教育制度の拡大が機会の平等化を下位の学校段階から順々にもたらすとする理論仮説(Maximally maintained inequality)がデータの動きとあまり合っていないことなどを明らかにした。以上の知見が教育不平等にかんする既存の主要仮説とどのように接続するのかを研究論文にまとめ、国際会議に提出しアクセプトされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究を継続し、得られた成果をもとに国際会議で発表したことは当初の研究計画の予定どおりである。また2014年度は研究の年次計画にもとづき国際会議に複数回出席し最新の研究動向を確認した。さらに海外のデータ・アーカイブを利用し、国際的な比較研究に必要なデータにアクセスし、分析のための準備に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究実績の概要で報告した知見が検討する国の範囲を広げ、教育制度とかかわる国際的なコンテクスト変数の影響を加味した上でも確認可能かどうかを、国際調査のデータを利用して検証する。コンテクスト変数としては労働市場における学歴の見返りや学校システムの内部格差の動きにも注意しつつ、高等教育の階層性をとらえる効果的な枠組が何かを探究していく。
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