2014 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジーの社会的相互行為の諸形式とその発達過程
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14J00963
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西江 仁徳 京都大学, 野生動物研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 相互行為 / チンパンジー / 社会 / 文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,タンザニア・マハレの野生チンパンジーM集団を対象にフィールド調査をおこない,「パントグラント」と呼ばれる発声をともなう相互行為,および「リーフクリップ」と呼ばれる道具使用をともなう相互行為について,それらの行動が利用される社会的な文脈を詳細に記載し,さらにその発達過程を検討することを目的とする。 2014年度は,研究実施計画にしたがって2度(計約3ヶ月)の現地調査を実施し,主にパントグラントとリーフクリップの映像データを収集した。この収集データは,暫定的な結果をフィードバックするために予備的な分析を現在進めているところである。また,1994年から2012年までの5人の研究者による長期データから,リーフクリップの使用される社会的文脈に関する量的な傾向を分析し,2014年8月に国際霊長類学会(ベトナム・ハノイ)にて口頭発表をおこなった。分析結果として,(1)リーフクリップはこれまで考えられてきた「求愛誇示」の文脈で用いられることは全体の約半数であり,求愛以外の文脈でも広く用いられれていること,(2)他地域の野生チンパンジー集団のリーフクリップと比べて,マハレではメスがリーフクリップをする割合が高いこと,などが明らかになった。リーフクリップが広い社会的文脈で用いられているという結果は,この行動が単一のシグナルではなく,受け手側の反応によって多義的な社会的意味をもちうることを示唆しており,今後受け手側の反応についての詳細な分析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ,研究実施計画にしたがって,野外調査・成果公表は順調に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度以降も,各年3ヶ月程度の野外調査によるデータ収集を予定しており,調査地との連絡や調査許可などの手続きも滞りなく進んでいる。また,映像データの分析について,分析ソフトの使用方法の習熟や,新たな分析方法の開発に取り組んでおり,すでに得られたデータの分析と結果の公表を迅速に進めていく。2014年度までに得られたリーフクリップの長期データにもとづいた分析結果を速やかに論文として出版し,今後はさらに質的なデータを用いた詳細な相互行為分析を進めていく予定である。パントグラントについても,長期データを用いた量的な傾向と発達過程の分析をおこない,さらに実際の相互行為場面におけるパントグラントの発し手/受け手それぞれのふるまいの詳細な分析を進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Book] Mahale Chimpanzees: 50 Years of Research2015
Author(s)
Nakamura M, Hosaka K, Itoh N, Zamma K, Shimada M, Ihobe H, Takahata Y, Inoue E, Matsusaka T, Fujita S, Nishie H, Hanamura S, etc
Total Pages
797
Publisher
Cambridge University Press
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