2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J00991
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大垣 翔 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | レギュレーター写像 / Hodge実現関手 / p進レギュレーター写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず本研究者の証明した事柄について述べ、その後本研究課題との関係について述べる。 本研究の中心的な対象であるp進レギュレーター写像の元となっているレギュレーター写像には、いくつか種類がある。本研究者は「Beilinsonが構成したレギュレーター写像」と「モチーフの三角圏からのHodge実現関手を用いて構成したレギュレーター写像」の二つが一致することを証明した。 この命題の意義について述べる。前者はBeilinsonレギュレーターと呼ばれ、代数多様体のL関数の特殊値と深い関係にあることがBeilinsonによって予想されている。本研究課題はこのBeilinsonの予想のp進類似に相当する。一方で、後者のレギュレーター写像(以後、Hodgeレギュレーターと呼ぶ)は、様々なコホモロジー論的操作との適合性を証明しやすく、この点がBeilinsonレギュレーターより優れている。例えば、射影的な射に対して定まる押し出し(push-forward)とHodgeレギュレーターの可換性は自明であるが、Beilinsonレギュレーターに対しては全く自明でない。第二にこの命題は、成り立つことは自然であると多くの研究者に考えられていたが、証明はされていなかった命題でもある。 この結果が本研究課題と関連して重要なのは、この結果のp進類似がまさに本研究課題の一つである「Besserレギュレーターとp進Hodgeレギュレーターの同一性の証明」にあたる。この二つのレギュレーターは、それぞれBeilinsonレギュレーターとHodgeレギュレーターのp進類似である。これが証明されれば、コホモロジー論的な操作と適合するp進のレギュレーター写像が得られたことになる。先の結果の証明方針はp進類似であろうと関係ないため、このp進類似する命題も同様に証明できるものと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題には、上の「研究実績の概要」にて述べた、「BeilinsonレギュレーターとHodgeレギュレーターの同一性の証明」については盛り込まれていない。そのため本課題の進捗状況は予定より遅れている。しかし、この命題の証明に時間を割く十分な理由がある。その命題は、多数の研究者により成立するものと期待され、中には証明を与えずにレギュレーター写像の研究に応用する研究者までいた。そのため、この命題が証明されたことにより、レギュレーター写像の研究は一歩前進したと言ってよい。他方でレギュレーター写像の研究は、p進レギュレーター写像の研究において、その指針となる重要な研究である。従って、長期的に見ればp進レギュレーター写像の研究にも十分資するものである。特に、上の項目でも述べたが、その命題のp進類似が本研究課題の一つである「Besserレギュレーターとp進Hodgeレギュレーターの同一性」である。
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Strategy for Future Research Activity |
既に述べたように、「Besserレギュレーターとp進Hodgeレギュレーターの同一性」の証明を第一に行う予定である。この命題は、元の命題と同様の方針で証明ができると期待している。この命題が証明できた後は、計画に従い「p進ポリログ」の課題に取り組む。 また本研究課題の「Hilbert曲面」の項目に関連して、浅井L関数に付随するp進L関数の構成も試みている。この課題に関して、本研究者はあるp進超関数を構成した。これを用いて期待するp進L関数を得るために必要なことは次の二点である。それはこのp進超関数がp進測度であると証明すること。及びそのp進測度から構成されるp進L関数の特殊値を計算して、浅井L関数の特殊値と比較することである。そのためには、ある保型形式の空間の中から保型形式とEisenstein級数を上手く選択して、それらのRankin-Serberg積分を計算する必要がある。現在はこれを行っている最中である。
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