2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J00997
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
沖田 光玄 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | トラフグ / テトロドトキシン / 水産学 / 生理 / 脳・神経 / 遺伝子発現解析 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
トラフグはフグ毒(TTX)を嗅覚で感知して摂取し、肝臓や皮膚だけでなく中枢神経系にもTTXを移行する。本研究では、フグに対するTTXの生態学的意義の解明の一環として、トラフグ稚魚のTTXの知覚・摂取と脳内作用を明らかにするため、TTXを感知または蓄積させた無毒人工種苗について、それぞれの嗅上皮と脳での遺伝子発現を網羅的に調べた。嗅上皮については嗅覚受容体、脳では食欲調節ペプチドと報酬系に関わるドーパミンに関連する遺伝子を目的遺伝子とした。
まず、新鮮海水に浸漬した個体とTTX添加海水に浸漬して嗅覚を刺激した個体について、次世代シークエンサーを用いて嗅上皮と脳からそれぞれ全mRNAをシーケンスした後、目的遺伝子のmRNAのコピー数を計数して比較し、TTXの感知により発現の変動する遺伝子を調べた。トラフグ稚魚はTTXを感知しても嗅上皮で嗅覚受容体は発現しなかったが、脳内で食欲の促進を示す遺伝子発現パターンが見られ、さらにドーパミンの分泌も示唆された。次に、生理食塩水またはTTXを投与した個体の嗅上皮と脳について、次世代シークエンサーを用いて全mRNAからTTXの投与により発現の変動する遺伝子を調べた。トラフグ稚魚にTTXを投与すると嗅上皮で嗅覚受容体OR(2種)の発現が増加する傾向が見られた。脳では、TTXの投与によりTTXを感知した時とは反対に食欲の抑制を示す遺伝子発現パターンが見られたのに対して、TTXを感知した時と同様にドーパミンの分泌が示唆された。
以上より、トラフグは嗅覚受容体OR(2種)を介してTTXを感知することが示唆された。また、トラフグのTTX摂取は食物と同様に食欲中枢により支配されることが示唆されたが、報酬系も活性化する可能性のあることから、トラフグはTTXを保有しない一般の魚類が「毒物」として認識するTTXを「報酬」と捉えることでTTXを摂取できると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画通り次世代シークエンサーを用いた遺伝子発現解析を行い、トラフグ稚魚がフグ毒を感知または蓄積することによって発現変動する遺伝子を特定できた。その中には嗅覚受容体遺伝子、食欲および報酬系に関わる遺伝子が複数含まれており、「トラフグはTTXを報酬として知覚・摂取する」という新たな仮説を立てることができ、研究内容をさらに発展させる成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究を通じてトラフグのTTXの摂取・蓄積には食欲および報酬系に関わる遺伝子が関与することが示唆されたことから、脳内でのドーパミンの分泌量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定するなどして、トラフグのTTX摂取と食欲・報酬系との関連について検討を新たに開始したい。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Transcriptome Analysis of Tetrodotoxin Sensing and Action of Tetrdotoxin in the Brain of Tiger Puffer Takifugu rubripes by Next-Generation Sequencing2015
Author(s)
Kogen Okita, Hina Satone, Engkong Tan, Shigeharu Kinoshita, Shuichi Asakawa, Hideki Yamazaki, Kazutaka Sakiyama, Tomohiro Takatani, Osamu Arakawa, Atsushi Hagiwara, Yoshitaka Sakakura
Organizer
145th Annual Meeting of the American Fisheries Society
Place of Presentation
Oregon Convention Center(Portland, Oregon)
Year and Date
2015-08-16 – 2015-08-20
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