2014 Fiscal Year Annual Research Report
高レイノルズ数乱流に対する局在解動力学に基づく力学系的描像の無限自由度系への拡張
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14J01005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺村 俊紀 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 機能構造 / 空間局在構造 / 非一様乱流 / 大規模運動 / 力学系 / 自己組織化 / マルチスケール / 間欠性 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来、乱流における空間的な非一様性、あるいは間欠性は、乱流を構成する空間的に局在した自律的な構造(秩序構造)とその相互作用として理解されると考えられてきた。均質な構成要素間の相互作用により不均一な状態が出現するというこの予想は、しかしながら、代表的な非一様系である層流乱流境界で成り立たない事がこの研究により示された。 さらに"機能的"な空間局在構造と呼ぶべきクラスの構造がある事を見出し、これにより2次元チャンネル流における層流乱流境界のダイナミクスが説明できる事を示した。これは一つの異質な構成要素によって、層流と乱流の混在という全体の非一様性が理解されている例となっている。 機能的な秩序構造(機能構造)のアイデアは層流乱流境界のみでなく、より広い非一様系に対して成り立つと予想される。自立性に注目していた従来の秩序構造と異なり、機能構造においては乱流の生成やエネルギーや運動量の輸送過程を"機能"として取り込む事ができるため、表現の幅が格段に広がる。 機能構造はその機能性のために他の秩序構造と独立に厳密解として抜き出す事は秩序構造の場合より困難であるが、この研究では本来秩序構造を切り出すための方法であったフィルター法を改良する事でこの困難を克服した。このアイデア及びここで開発された手法は異なるスケール間の協調現象、あるいは空間的な自己相似性を理解する上で必須の性質と言える。 この内容をまとめた論文を執筆し、現在査読中である。また2014年5月と2015年1月に開催された国際学会において、それぞれ口頭とポスターで発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、機能構造の概念の導入とそれを捉えるための数値的な処方箋を確立した。これは申請時には想定していなかった成果ではあるが、最終的な目標である空間的に局在した構造のダイナミクスを表現するために必須であるといえる。空間的に局在した現象をその自律性によって理解しようとしていた申請時の研究計画に比べ、機能性を取り入れる事に成功した事でこの研究の学術的な重要性は増大したと確信している。 この点において当初の計画よりも進行していると言えるが、機能性を明かにするために最終的な目的である3次元の流れではなく2次元の流れを使用したため、3次元の流れへの適用が計画より遅れている。もっとも、3次元の場合に想定されるであろう困難の一部は機能性の導入により解決できると思われるので、結果的には適切な研究の順序であった可能性が高い。これらの点を加味すれば、現在までの研究は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は機能構造と相補的な概念に相当すると期待される、比較的緩い空間変動に着目する。上述した系において、機能構造の生み出す乱流状態は一様でなく、機能構造から離れるにつれ弱くなっている。この減衰過程を動力学的な視点から理解する事を試みる。これはエネルギーの空間的な輸送を力学系的アプローチに取り込むという点で非常に重要である。この試みの一部は既に実行され、2015年1月の国際学会において発表されている。この成果は来年度中に二度の国際学会(5月、8月)で発表される予定であり、現在論文を執筆中である。
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Research Products
(6 results)