2014 Fiscal Year Annual Research Report
RNAiを用いたプラナリアの摂食行動を制御する分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
14J01042
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下山 せいら 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | プラナリア / 摂食行動 / 走化性 / ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
摂食行動は動物において共通の行動である。肉食のプラナリアは水中でどのように餌を見つけ、認識し、摂食するのだろうか。 プラナリアの摂食行動は、走化性、腹部から咽頭(口)を伸ばす咽頭伸長を経て、餌を取り込む行動から成ることが観察から分かった。はじめに、プラナリアの摂食行動を定量化するための行動解析系を作成した。 再生で有名なプラナリアは、体の一部を切除しても生存できるため、体の一部を欠く個体の行動を解析することができ、プラナリアの脳は頭部にあるが、咽頭が体の中部にあるため、脳または咽頭領域を切除した個体で行動を見ることができる。通常個体、尾部切除個体、頭部切除個体、頭部断片の4種類のプラナリアの走化性と咽頭伸長を行動解析したところ、頭部切除個体では、走化性も咽頭伸長も行えなかった。頭部断片は走化性を行うことができなかった。走化性には脳と咽頭部が必要であることが分かった。 プラナリアは、最も原始的な脳を持つ生物の1種と言われ、ドーパミンやGABAなどを神経伝達物質とする6種類のモノアミン・アミノ酸作動性ニューロンと、複数の神経ペプチド作動性ニューロンを持つことが報告されている。プラナリアのトランスクリプトーム解析の結果をもとに、31の神経ペプチド候補遺伝子をクローニングできた。モノアミン・アミノ酸作動性ニューロンの神経伝達物質合成律速酵素の遺伝子と神経ペプチド候補遺伝子をRNAiによりノックダウンしたプラナリアで行動解析を行うために、RNAi条件の検討を行った。次に、各遺伝子をRNAi処理したプラナリアを用いて、摂食スクリーニング解析を行った。神経ペプチド候補遺伝子のうち、いくつかの遺伝子で餌を食べるのに後れを取る表現型を持つプラナリアが見つかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラナリアの摂食行動を定量化する行動解析系を作成・使用し、プラナリアの摂食行動に関わるプラナリアの体の範囲を切除個体を用いた行動解析から明らかにすることができた。また、クローニングを行った神経ペプチド候補遺伝子の発現パターンが染色から明らかになった。 今年度はプラナリアの摂食行動に関わる神経伝達物質の同定までは至らなかったが、行動解析のためのRNAiの条件を検討を行い、RNAi個体を用いて摂食行動に異常のある表現型を持つ候補を絞り込むことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
行動解析から、摂食行動が正常に行えない表現型を持つRNAi個体が、なぜ、餌を食べられないのか、観察や走化性と咽頭伸長の詳細な行動の解析系から明らかにし、プラナリアの摂食行動に関わる神経系を同定する。 プラナリアの摂食行動において、明らかになった摂食に関わる分子メカニズムが、進化的や生態学的にどのような意味を持つか、既知の知見と比較して考察する。
|