2014 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルジェネティクスによる気孔形成を支える分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
14J01075
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阪井 裕美子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 気孔 / 非対称分裂 / 細胞分化 / 低分子化合物 / ケミカルジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の葉の表皮組織にはガス交換のための器官として気孔が存在する.気孔はその細胞系譜が明らかとされているため,非対称分裂を伴う細胞分化のモデルとして適している.これまでに気孔をクラスター化させる新しい低分子化合物M6を同定しており,本研究では, M6を用いて気孔形成を支えるメカニズムを解明することを目的とする. M6を処理したシロイヌナズナ子葉の表皮を共焦点顕微鏡により観察すると,気孔クラスターに加えて,小さな細胞が集合した野生型にはみられない異常な構造体が存在することが分かった.そこで気孔系列細胞を標識する複数のマーカーラインにM6を処理したところ,M6で誘導される小細胞集団が気孔系列細胞で構成されていることが明らかとなった.この結果は,小細胞集団が気孔クラスターの前駆構造体であることを示唆するものである. 気孔クラスターの形成過程をさらに詳細に解析するため,M6を処理した子葉表皮の画像を経時的に取得した.その結果,気孔前駆細胞の非対称分裂の異常によって小細胞集団が形成される様子を捉えることに成功した.さらに同時に,小細胞集団が気孔クラスターへ分化していく様子も観察できた.以上の結果より,M6は気孔形成における非対称分裂に影響していると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気孔クラスターの形成過程のイメージング解析に関しては,M6処理下における気孔系列マーカーラインの観察に加えて,タイムラプス画像の取得にも成功し,それらの結果よりM6が気孔形成における非対称分裂に影響することを明らかにすることができた.一方,計画に対して遅れている点としては,M6の標的経路の同定が挙げられる.両者を総合して考えると,本研究はおおむね順調に進行していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
M6の標的経路の同定を目指す.M6はある標的分子に結合してその状態を変化させることによって気孔クラスターを形成させると考えられる.そこで,M6の構造類似体を植物体に処理し,その表皮を観察することによって,気孔クラスター形成において標的分子と相互作用する化学構造を決定する.またこれまでの解析により,M6が非対称分裂に影響を与えることが示された.先行研究において,気孔形成における非対称分裂を制御する因子はいくつか知られており,これらの変異体でも気孔クラスターが観察できる.そこで,これらをM6の標的因子の候補として,M6との相互関係を明らかにしていく.
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Research Products
(3 results)