2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J01076
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津田 裕之 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 認知心理学 / 空間認知 / 記憶 / ナビゲーション / 方向感覚 / 個人差 / 仮想環境 / 地図 |
Outline of Annual Research Achievements |
大きな津波や洪水の発生時には危機を察知した時点で可能な限り素早く高い場所へと避難することが必要となる。高台や避難所までの経路は浸水や家屋倒壊などにより既知の最短経路が必ずしも利用可能とは限らず、状況に応じた臨機応変な経路の変更、また場合によっては目的地の変更が要求される。このような事態に備えるにあたっては、周辺環境の地形や地理について事前によく知っておくことが有効であると考えられる。 地形という環境的要因と人間の認知の関係について探るため、本研究では人間が環境内の土地の高さや勾配をどのように学習し、また移動経路決定の際の手がかりとして利用しているかについて検討した。実験では仮想環境を用いた空間の学習課題を行ない、被験者は都市内を移動することによってその空間を学習した。次に、与えられた目的地へとなるべく早く到着するという課題を行い、到着までの所要時間や利用経路が計測された。さらに、記憶課題によって被験者が環境内の土地の高さや坂道の特徴といった地形的要素をどの程度正確に記憶していたかが測定された。実験課題の終了後、被験者は方向感覚質問紙に回答した。 実験の結果、坂の記憶が正確であった被験者ほど、より効率的な経路で目的地への移動ができていたことが明らかになった。これは、坂の情報が移動経路の選択にあたって効果的な手がかりとなっていることを示唆する。ただしこの関係性は、方向感覚質問紙のスコアによって方向感覚能力が高いと判定された被験者にのみ見られた。また、坂を記憶する課題の成績には男女差が見られ、女性に比べて男性の方が坂の記憶が正確であった。その他の課題成績に関しては男女差は見られなかった。 以上の結果から、環境内の坂の情報をよく記憶することが目的地への効率的な経路の選択に寄与することが示唆された。また、これらの認知過程には個人差が存在することも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
空間の学習能力に関する研究を実施したが、当初予定していた学習時の視点の効果についてはまだ検討することができておらず、今後の課題として残っている。地図学習に関する研究については準備を行ない、今後実験を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、空間学習における視点の効果・地図の学習・ワーキングメモリの空間学習における役割の3点について研究を進めて行く予定である。
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Research Products
(1 results)