2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J01127
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 涼香 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | リビングカチオン重合 / 交互共重合 / フッ素 / アルデヒド / フルフラール / 配列制御 / 機能性高分子 / 温度応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)フッ素含有ビニルエーテル(VE)とアルデヒドの制御カチオン交互共重合および(2)有機反応と制御カチオン重合が同時に進行する新規重合系の設計を行った。 (1)について、フッ素含有VE(13FVE)とp-メトキシベンズアルデヒドの共重合を行った。これまでと同様にトルエン中で行うと、系中は不均一になり、重合が進行しなかった。そこで、溶解性を向上させるためにフッ素溶媒を用いると、均一系で重合が進行し、交互共重合体を得ることができた。ポリマーの分子鎖の長さを揃えるためにプロトントラップ剤で系中の微量な水の除去を試みたところ、狭い分子量分布を与えた。また、異なる側鎖構造のアルデヒドでも制御カチオン交互共重合を進行させることができた。交互共重合体の有機溶媒への溶解性はホモポリマーに比べて向上し、アルデヒドの構造に応じて異なる溶媒中でUCST型の温度応答挙動を示した。さらに、分子量分布が狭いほど高感度な応答を得ることができた。一方、フィルム状に加工して撥水・撥油性の検討を行うと、約2倍フッ素側鎖をもつメタクリレート型のホモポリマーと同程度の撥水・撥油性をもつことがわかった。加えて、酸性条件下で生成ポリマーは完全に加水分解することができた。 (2)について、有機反応のDiels-Alder(DA)反応と制御カチオン重合が同時に進行する系の設計に向け、アルデヒドの側鎖にフラン環をもつフルアルデヒド類を選択した。まず、フラン環の3位にアルデヒド基をもつ3-フルアルデヒドをVEと共重合したところ、DA反応は起こらず交互共重合のみが進行した。異性体であるフルフラール(2-フルアルデヒド)では、フラン環の側鎖にモノマーのフルフラールがhetero DA反応により付加したポリマーが得られた。生成ポリマーはVEが2連鎖した繰り返し構造であり、2:(1+1)型交互共重合体であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる目的は、ビニルエーテル(VE)とアルデヒドを用いた、多様な機能性を有する分解性ポリマーの精密合成および構造制御である。本年度の主な結果は(1)性質の異なる極性官能基としてパーフルオロアルキル基との共重合条件を見出すことができたこと、(2)これまでに無い新しいシーケンスのポリマーを合成することができるようになったことなどの点で、本研究を進める上で大きな展開であった。 (1)については、新しい機能性官能基のモノマーとの共重合を行うことで、これまでの重合条件とは最適条件が異なることが明らかとなり、異なる重合条件下でも制御カチオン交互共重合を達成した。また、生成ポリマーは有機溶媒への溶解性が向上しただけでなく、優れた撥水・撥油性を示した。交互共重合体は完全に分解することも可能であったため、撥水・撥油性を示す分解可能なポリマーフィルムの創製が可能となった。 (2)については、有機反応と制御重合が同時に進行しただけでなく、2:(1+1)型交互共重合体という非常に珍しいシーケンスのポリマーを合成することができた。また、わずかに構造の異なる異性体モノマーでは通常の1:1型交互共重合体を与えたため、これらの構造の違いによる性質の違いが興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、異なる機能性官能基の導入(上記(1))や特殊な配列制御(上記(2))が達成されたので、本年度は主に(2)に関して、(i)反応機構の詳細と(ii)特殊な配列を活かした機能性の変化について検討する。 (i)について、有機反応が何を駆動力にして起こっているか、機構について検討する。具体的には重合温度や触媒、モノマー構造などを変えて重合を行い、その影響について系統的に調べる。また、モデル反応を通して機構の証明を行う。反応のON-OFFを制御することができれば、より複雑なシーケンスのポリマーの合成へつながることが期待される。 (ii)について、刺激応答性側鎖をもつビニルエーテル(VE)や、重合開始点をもつVEとの共重合を行う。刺激応答性ポリマーはその配列の違いにより異なる性質が現れると期待される。そこで、2:(1+1)型と通常の交互共重合体について、その性質を比較する。また、重合開始点の導入によりグラフト共重合体を合成することができれば、配列により枝鎖の密度を変化させることができるので、異なる性質のポリマーが得られると考えられる。例えば、生分解性のポリ乳酸は結晶性やステレオコンプレックス形成が可能であるが、ポリマー鎖の密度によってそれらの挙動に変化が現れると期待される。他にも、生成ポリマーの側鎖にはDiels-Alder反応の基質として高い反応性をもつフラン環があるため、重合後に高分子反応することも可能である。また、重合系中にフルフラールに加えて異なる種類のアルデヒドを添加しておけば、側鎖にフルフラール以外の分子を導入する、側鎖構造の変換もできる。本重合系は、有機反応と重合の同時進行という特徴だけでなく、以上に示したような分子設計・機能の付与の可能性を有しており、それらを用いることでポリマーの性質を大きく変えることが可能である。
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Research Products
(2 results)