2014 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外光発光イメージングを用いた非侵襲的・経時的なマウス脳内細胞状態定量法の開発
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14J01180
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 晋平 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | イメージング / システム生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
個体レベルで表出する高次の生命現象は細胞が複雑なシステムを構築することにより成り立っている。これまでにこれら生命現象を解明するために様々なイメージング手法が開発されてきたが、個体、臓器の階層において張り巡る複雑な細胞ネットワークを解き明かす事は未だに医学・生物学の分野において大きな課題である。我々はセンチメートルスケールといった大きなサンプルの高速イメージングを可能にするシート照明顕微鏡、およびシート照明顕微鏡を用いた臓器まるごと観察、個体まるごと観察を可能にする透明化試薬に着目した。シート照明顕微鏡はシート状の励起光を照射する蛍光顕微鏡であるため光学セクショニングによる高速イメージングが可能であり、新規臓器透明化手法と組み合わせる事でマウス全臓器の一細胞解像度イメージングを一日以内に行うことが現実となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々の研究室が開発した透明化試薬CUBIC(Clear, Unobstructed Brain Imaging Cocktails and Computational analysis)試薬中に含まれているアミノアルコールは、生体組織において光吸収により光透過性を妨げる代表的な色素であるヘモグロビン中のヘムを高効率に溶出する性質を有していた。この性質を利用し、マウス臓器に対してCUBIC試薬で処理したところ、脳と同様に透明化が高度に進行することを見出した。臓器摘出前のPFA灌流固定時に希釈したCUBIC試薬を灌流させて透明化処理を行うことで、更に透明化が進行し、10日間で臓器透明化が、14日間でマウス全身透明化が完了する新規プロトコールを開発した。このプロトコールに基づき、皮膚を剥離したマウス個体全身に対して透明化処理を適用した結果、胎児マウスでは骨組織を除く全身の透明化に、成体マウスでは骨組織及び頭部を除く全身の透明化に成功した。このプロトコールに基づき、1)幼若マウス全身イメージングそして成体マウスイメージング、2)糖尿病モデルマウスにおける膵島の定量的評価、3)様々な臓器における解剖学的同定を一細胞解像度の高速3次元イメージングを用いて行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1細胞解像度で包括的に個体を観察する事によって既存の技術ではなし得なかった「個体レベルのシステム生物学」が現実になってきた。これら透明化技術はCRISPER/CasやTALENによる遺伝子改変技術、DREADDsによる薬理学的摂動技術と組み合わさる事によって生命現象における細胞間ネットワークの解明に更なる力を発揮すると期待できる。現段階では成体マウスのような大きなサンプルを撮像する事が可能なシート照明顕微鏡が存在しないこと、撮像後のイメージを定量的に比較解析する技術が十分でないため、顕微鏡やインフォマティクスの更なる開発が必要である。将来的には、癌の全身転移や免疫疾患といった少数細胞が非常に重要な意味をもつ現象の解明を行っていきたい。
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Research Products
(7 results)