2015 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外光発光イメージングを用いた非侵襲的・経時的なマウス脳内細胞状態定量法の開発
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14J01180
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 晋平 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | システムズ生物学 / イメージング / 癌転移モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
宮脇博士らによる水溶液性透明化試薬Scale、今井博士らによる屈折率調整試薬SeeDBに着想を得て、透明化試薬の更なる改良に取り組み、高効率な脂質可溶化カクテル(CUBIC-1)、高屈折率調整カクテル(CUBIC-2)を開発しマウス全脳の透明化に成功した。これらのCUBIC試薬を用いて透明化を行ったマウス全脳はシート照明顕微鏡で観察することができ、一細胞解像度の三次元イメージングデータを高速に取得することが可能となった(文献3)。申請者は個体レベルでの細胞動態そして少数細胞が重要な意味を持つ生命現象、病理現象を捉えるために、CUBIC試薬が偶然持っていた脱色効果に着目しマウス全身・全臓器イメージングを可能にする技術開発を行うことにした。また全身・全臓器透明化手法を用いることで全身・全臓器一細胞解像度イメージング、そして一細胞解像度で個体・臓器において細胞の位置情報と機能情報を保持した状態での定量的解析基盤の確立に取り組んだ。レポーターマウスの臓器に対して核染色を行うことにより臓器の三次元イメージを得ることが出来、細胞核の密度分布そしてレポーターマウスの種類によって得られるシグナルパターンが異なるため、特徴的なシグナルを解析することにより心臓の冠動脈そして肺の気管支といった解剖学的部位の抽出をおこなった。また臓器の一細胞解像度イメージングが病理学的解析に用いることができるかを調べるためにストレプトゾトシン(STZ)誘導糖尿病モデルマウスを用いてランゲルハンス島の体積分布を定量的解析、がん微小転移巣およびがん微小環境の定量的解析に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1細胞解像度で包括的に個体を観察することが可能になったため、癌の全身転移といった少数細胞が原因となる病気に取り組んでいる。現段階では骨の透明化が非常に困難であるため、生体マウスのような大きなサンプルの定量的解析を行うには透明化手法、インフォマティクスの更なる開発が必要である。しかし脳、肺、肝臓、膵臓、腎臓といった臓器における癌微小転移の定量的解析等はすでに成功している。また臓器の免疫染色により血管系の描出が可能であり、癌転移巣と血管系との距離を定量化することによって癌転移経路方法の理解に近づいている。
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Strategy for Future Research Activity |
包括的に哺乳類個体の細胞ネットワークを観察する技術を開発することにより「個体レベルのシステム生物学」が可能となった。開発した透明化技術は臓器を均一に染色することのできる免疫組織化学染色法と組み合わさる事によって分子から細胞そして個体という多階層にわたる複雑な生命現象の解明に更なる力を発揮すると期待できる。更にこの技術により臓器に存在する少数細胞の同定そして細胞同士の関連性が初めて明らかになると考えており、癌や免疫疾患を始めとした医学分野において新たな視点を生み出すと期待出来る。
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Research Products
(3 results)