2014 Fiscal Year Annual Research Report
C-H結合活性化を経る、C=O、C=N結合への不斉付加反応の開発
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14J01208
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
白井 智彦 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 不斉ヒドロアリール化 / 炭素-水素結合の不斉官能基化 / ホスホロアミダイト配位子 / カチオン性イリジウム錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属錯体触媒を用いた炭素-水素結合の活性化を経由する炭素-炭素結合形成反応は、経済性や環境調和性に優れた究極的な高原子効率プロセスである。近年、この分野は盛んに研究が進められており、多様な変換反応が開発されてきた。しかし、現状、これらの変換はラセミ型の反応が多く、高効率な不斉反応への展開例は極端に少ない。特に、この方法論を用いた極性不飽和結合(カルボニル基、イミノ基)へのエナンチオ選択的な付加反応は、医薬分野において有用な合成中間体の合成法となり得るが、成功例はない。これは、「炭素-水素結合の活性化」と「極性不飽和結合へのエナンチオ選択的な付加反応」の両方のプロセスに対して活性な触媒がないためである。 今年度は、カチオン性イリジウム/Me-BIPAMを用いた、炭素-水素結合のケトンへのエナンチオ選択的な分子内付加反応の開発を目標に研究を進めた。検討を重ねた結果、以下の成果を得た。 (1) カチオン性イリジウム/Me-BIPAM錯体がα-ケトアミドの分子内直接不斉付加反応を高収率かつ高エナンチオ選択的に触媒することを見出した。本変換反応は、炭素-水素結合の極性不飽和結合へのエナンチオ選択的な付加反応に関して高い選択性を達成した初めての報告例である。また、この手法によって、医薬品の有用な合成中間体である光学活性な3-ヒドロキシ-2-オキシインドール類の簡便合成が可能となった。本研究成果は、Angew. Chem. Int. Ed.誌に掲載された。(ACIE 2014, 53, 2658-2661.) (2) 更に高効率な反応系の創製のため、①で開発した反応の機構解析研究をおこなった。我々は、実験化学及び計算化学を用いた多角的な解析実験を進め、本反応の律速段階を特定することに成功した(研究成果は国際学術誌に投稿中)。本成果は、炭素-水素結合の不斉官能基化という研究領域をより一般的、実用的に発展させるための重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭素-水素結合の触媒的な直接付加反応の化学については歴史が浅く、有機合成への利用を目的とした不斉付加反応の研究は非常に少ない。本研究課題では、他の触媒に見られない極めて高い選択性を発現させることに成功した。我々が開発した【カチオン性イリジウム/Me-BIPAM触媒を用いるα-ケトアミドの分子内直接不斉付加反応】は、医薬品の有用な合成中間体である光学活性3-ヒドロキシオキシインドール誘導体を出発物質からワンステップで合成可能である(全16例、60->99%収率、84-98% ee)。
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Strategy for Future Research Activity |
カチオン性イリジウム/Me-BIPAM錯体がα-ケトアミドの分子内直接不斉付加反応に対して高活性を示すこと見出したが、現状では多くの制限を抱えている(配向基を有する基質を用いる必要がある、高温を要する、分子内反応に限定されるなど)。これらの問題を解決し、更に実用性、汎用性の高い反応を開発するためには、より高活性な触媒の創製が必要である。今年度の研究で得られた知見を活かし、【C-H結合の開裂】と【不飽和結合への不斉付加反応】に対してより効果的な新規不斉配位子の開発を目指す。また、開発した反応を医薬品などの骨格構築に展開し、炭素-水素結合の極性不飽和結合へのエナンチオ選択的付加反応の実用性向上に努める。
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Research Products
(6 results)