2014 Fiscal Year Annual Research Report
時空の対称性の研究とそのインフレーション理論への応用
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14J01237
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宝利 剛 神戸大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 時空の対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
曲がった時空を扱う相対論に於いて、時空の対称性という考え方がこれまで重要な役割を果たしてきた。それは、時空の性質のみならずそこで振舞う物質の運動も簡単に扱えるようになるからである。時空にKilling-Yano対称性とよばれる対称性が存在する場合、自由粒子の運動やスカラー場、ディラック場の従う運動方程式に対する保存量の存在が示されている。また、Killing-Yano対称性がブラックホールを完全に特徴づける対称性であることも解明された。我々の研究では、ブラックホール時空にとどまらず、あらゆる時空に対するKilling-Yano対称性を系統的に調べる手法を提案した。 具体的には、力学変数の微分も独立な力学変数とみなすことにより Killing-Yano対称性を定義する微分方程式系を扱いの簡単な一階線形偏微分方程式系へ変形し、その解のなすベクトル空間の次元について考察した。そして、あらゆる時空に対する「Killing-Yano対称性をかぞえるための公式」を与えた。 論文では、宇宙論モデルに使われるフリードマン時空から、ブラックホール時空や重力インスタントンなど様々な時空の対称性について調べた。
平行して、可積分なハミルトン力学系についての研究も行った。ハミルトン-ヤコビの方法に代表されるように、与えられた古典力学系がリウヴィル可積分であるか判定する方法には使用できる状況が限定されているものが多い。本研究では、通常とは逆からのアプローチを取り、リウヴィル可積分を可能とするポテンシャルを系統的に解析し、いくつかの場合に具体的にポテンシャルを書き下すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
あらゆる時空に対するKilling-Yano対称性を判定する曲率計算プログラムの開発が計画通り完成し、相対論で扱われる重要な時空について一通り、そのKilling-Yano対称性について調べることが出来た。そして得られた成果を国内外の国際研究会や日本物理学会等で発表を行った。また、当初は難しいと考えていたKilling-Stackel対称性についての解析も、そのためのアイデアが得られ、現在進行中である。これは計画時点では想定していなかった嬉しい進展である。本研究の目的であった、余剰次元の幾何学的性質と4次元物理との関係の解明についてはさらなる考察が必要であり、その点に関して少し遅れをとっている。総合して、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
時空の対称性の拡張は反対称テンソルへの拡張であるKilling-Yano対称性だけでなく、対称テンソルへの拡張であるKilling-Stackel対称性もある。とくに、Killing-Stackel対称性の方が相対論や宇宙論を議論する際に重要な役割を果たす。今後は、Killing-Yano対称性の解析に於いて蓄積してきたノウハウを活用し、Killing-Stackel対称性について解析を行う。Killing-Yano、Killing-Stackelの両対称性を調べる手法を確立させた後、本研究の目的である余剰次元の幾何学的性質と4次元物理との関係の解明のため、様々な超重力理論の厳密解についてその対称性を調べていく。
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Research Products
(5 results)